二人の騎士(ルフナ視点)
「私の名はコストルだ。君はルフナというのかな?」
「はい」
「随分と落ち着いているようにみえるけど、今いくつなんだい?」
「16です」
「まだ16歳なのか!それじゃあ私は君より10歳年上になるな。警備隊にはいつから?」
「一昨年の春からです。それまでは学校に通いながら護身術を学んで…」
コストルさんと話をしながら、騎士団の駐屯所に向かう。
彼は村の役人や時々店に来る貴族達とは違って、俺を対等の人間かのように扱ってくれる。
王都の騎士団だからなのかとも思ったけど、駐屯所にいた騎士の何人かに蔑むような視線をぶつけられた。
卑しい身分の俺でも平等に扱ってくれるのは、コストルさんの人間性なのだと知って益々尊敬する。
案内された部屋にいたのは、中性的な面立ちをした騎士だった。
色白の肌に、エメラルドのような瞳。
癖のない淡い金髪は長く、後ろで一つに束ねている。
女性に見間違えられそうな程の美人だけど、着ている制服も腰から下げている剣も男性用で、手の大きさを見れば一目瞭然だった。
「君の活躍は報告を受けているよ。あの男は窃盗品の転売を繰り返す悪党でね。隣町の豊穣祭で目撃情報があって、密かに追っていたんだ」
金髪の美人騎士もコストルさんと同じくとても友好的だった。
二人とも、特にコストルさんの上官と思しき彼は、立ち振る舞いから見ても貴族の生まれに違いないのに少しも偉ぶる様子がない。
「名前は?」
「ルフナです」
「ルフナ、か。私はグレイル・バーレイだ」
バーレイというと、この国の公爵家の一つで、現王の生家だ。
現在のティーズベル国王・ディブランは、前王の妹姫が降嫁したバーレイ公爵家の長男として生まれ、後に男児に恵まれなかった前王の養子になったと聞いている。
そしてバーレイ家の三男が王国軍第一騎士団に所属して副団長を務めていることは、こんな辺境の村にも噂が届くほど有名な話だった。
「名目上、私が豊穣祭の視察団の責任者をしている。今回のことで君に褒美を取らせたい。何か望むものがあれば遠慮なく言ってほしい」
「有難いお申し出ですが、辞退いたします」
グレイル様は断られるとは思わなかったという顔をした。
俺の隣にいたコストルさんも驚いた顔をしている。
すぐに返事をしたのはまずかっただろうか…。