おもてなしの計画
騎士学校に通い始めて間もなく、ルフナにお友達ができた。
オータナル男爵家のご子息のようだけれど、損得勘定なく仲良くしてくれているようだ。
私が息子を出産したことを夫や実家に知らせていれば、ルフナに平民の苦労をさせることも、身分のことで不自由な思いをさせることもなかった。
私の我儘でルフナは身分相応の生活ができなくて、通えるはずの貴族学校にも通えない。
それをずっと心のどこかで負い目に感じていたけれど、こうしてルフナを一人の人間として尊重し、友達付き合いをしてくれる人に出会えたことがとても喜ばしかった。
お友達の彼が家に遊びに来ることになったと聞いた時は、私の方が子どものようにはしゃいでしまった。
豪邸で生まれ育った貴族のご子息が、庶民を自宅に招くのではなく自ら狭くて小さな家を訪ねようと思うなんて、余程仲が良くなければ話題にも上らないし約束も交わしたりはしない。
その日はお店を定休日にすると言ったら、ルフナは苦笑いを浮かべて首を振った。
「そこまでしなくていいよ」と断られてしまったので、それならせめてアフターヌーンティーを楽しんでもらいたい。
私は早速、おもてなしの計画を立て始めた。
翌日、閉店後に雑貨店へ行って三段のケーキスタンドやお皿、来客用のティーセットを選び、人気の紅茶店でおすすめの茶葉をいくつか購入した。
途中で王家御用達の洋菓子店・マルティエヴァリスに立ち寄って、メープルフィナンシェとアイスボックスクッキーを手に取る。
あの頃、頑張った自分へのご褒美に食べると決めていた懐かしのお菓子だ。
ケーキスタンドに乗せるお菓子はできるだけ自分の手で作りたくて、店では使わない小麦粉や果物、チョコレートなども買っていたら、予想以上に大荷物になってしまった。
家まではそれほど遠くないし、ちょっと頑張れば大丈夫かと思って歩き出すと、たまたまお店の常連さんと会って運ぶのを手伝わせてしまった。
お店の外で会ったときにも、お客さんの時と同じように接してくれることが嬉しい。
貴族同士ではこんな風に親切心を分かち合うような関係はなかなか作れなかったし、その裏には必ず家名が持つ権力と懇意になりたいという意図が透けて見えた。
だからどんな小さなことでも、手伝ってくれたらすごく嬉しい。
お店でも親しくしてくれるお客さんにはついついサービスしてしまう。
二号店は村とは違っていろいろな人が来るのだから、程々にしなければとは思うのだけれど。
今度あのお客さんがお店に来たら、何かお礼をしよう。
荷物を二階まで運び、あらかた片付け終わったらお菓子作りに取り掛かる。
今日作るのは、スコーン。
米粉と小麦粉で二種類作ることにする。




