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そのカスミソウは、ピンク色  作者: 木原 美狼
切なる願い
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野坂雅 1


気温が上がり衣替えの時期になる。私は人より暑がりのため、もう夏服にした。クラスで夏服なのは私一人だ。少し恥ずかしくて周りをきょろきょろ見てしまう。


そんな私には、気温が上がっても近くにいてほしいと思う人がいる。それなのに、最近そっけなくされている気がする。もし何か悩んでいるなら頼ってほしい。私は、彼女を守りたい。またいつものように本音を隠されてしまうかもしれないが声をかけようと思い話しかける。すると、昨日までとは全く違いそっけなくなる前のような笑顔で返事をする。


「今日はなんか元気だね。いいことあったの?」

「うん。…カスミソウが咲いてたの。」

「カスミソウ、そっか。よくわかんないけど楽しそうでよかった。」


本当によかった。かすみは可愛くてふわふわしていて守りたくなる。でも、本人は守られる気なんてないかのようにいつも一人で考え込んでしまう。だからこそ私はかすみを守りたい。一人じゃないって支えてあげたい。でも、今回は何も役に立てなかったな。少しだけ悔しい気持ちになる。…カスミソウか。そういえば学校の花壇に咲いていた気がする。あれを見たのかな。


「ね、カスミソウって学校の花壇に咲いているよね。」

「そうだよ。雅も気づいたの。綺麗だよね。」

「うん、綺麗で可愛い花だと思うよ。」


かすみは可愛らしい笑顔で「そうだよね。」と言う。毎日、この笑顔に癒される。私にとってかすみとの出会いはかけがえのないものだと思う。その日を境にかすみがそっけない態度をとることがなくなった。カスミソウの力って凄いなと感心した。



もうすぐテスト期間で部活がなくなる。それよりも前に少しでもバスケが上達するように頑張った。部活終わりはいつも、奏多と帰ることが日課となっていた。


「奏多、お待たせ。今日片づけ長引いちゃって、ごめんねー。」

「いいよ、お疲れ様。」

「奏多もお疲れ。」


奏多は身長が高く、百八十センチもある。並んで歩くと女子の中では身長が高いほうなのに、私が小さく感じる。制服の自由度が高いからとパーカーを着ていて髪の毛までセットしている。こういうところがギャップがあって可愛いと思う。そんな奏多といつものやり取りをする。後はその日あったこと、テレビのこと、趣味のことなどを話しながら帰る。私はこの変わらない安心感のある時間が心地良くて好きだ。


「そういえば、もう少しでテストだな。」

「そうだね、嫌だな。勉強してもできない教科はできないもん。」

「それは仕方ないな。できる教科極めれば何とかなる。」


本当に何とかなるのか、と思いつつもこの軽いノリが丁度いいのであえてツッコまないでおく。


「そうだ、今度私の友達に奏多のこと紹介したいんだけどいい?」

「うん、あの子でしょ。あのー可愛い子。」

「そう、橋本かすみっていう天使みたいに可愛い子。」

「楽しみにしてる。超イケメンで優しい彼氏って紹介して。」

「何言ってんの。私の彼氏はそんな人じゃないよ。」


と言っていつものようにふざけ合う。やっぱり、気を許した相手との話は楽しい。いつか、かすみともこのくらい気を許して話せる関係になりたい。出会ってもうすぐで半年が経つ。そうすれば自然とそういう関係になれるだろうと思った。


私の家の前に着くと、奏多はいつもハイタッチを求める。私もそれが当たり前となりハイタッチをしながら「また明日。」と言い家の中に入る。これがいつもの私の下校時の出来事だ。授業や部活の疲れが癒される大事な時間の一つである。今日は、かすみに紹介する約束もできたし、とりあえずテストに集中できるように今はバスケを頑張ろう。



楽しい時間は過ぎるのが早くて、時期はテスト期間になっていた。でも、私には、かすみに奏多を紹介するという一大イベントがある。


「かすみ、今日の放課後なんだけど時間大丈夫?」

「大丈夫だよ。彼氏紹介してくれるんだよね。雅の彼氏見るの楽しみ。」


そう言って手を握ってブンブン振り回すかすみはいつもよりテンションが高く見えた。私も楽しみにしていたから、同じ気持ちなら嬉しいと思いながら私も手をブンブン振ってみた。


一組の教室の前で奏多とは待ち合わせをしている。かすみは緊張しているのかさっきからずっとそわそわしている。こういうところも可愛くて好きだなと思いながらかすみに、「緊張しなくていいよ。」と声をかける。一組のホームルームが終わったらしく人がぞろぞろと出てくる。その中でも長身の奏多を見つけるのはすごく楽だ。奏多も人より目線が高いからかすぐに私たちを見つけて手を振りながら近づいてくる。


「お待たせ。」

「お疲れ。じゃあ、さっそく紹介するね。」


私はまず奏多の隣に立ち紹介する。


「こちら、私の彼氏の松永奏多。身長高いけど怖くないから安心して。」

「初めまして。サッカー部に所属しています。雅からよく話聞いてるけど本当に可愛いね。よかったら仲良くしてね。」


奏多はいつもの調子で挨拶をする。かすみは少し恥ずかしいのか私に目線で助けを求めてくるのがわかる。今度は、私はかすみの隣に立ち紹介する。


「この子は、橋本かすみ。とにかく可愛くて私の癒し。」

「初めまして。えっと、部活は入ってないけど図書委員をしています。」


かすみは赤面症らしく顔が赤くなっている。奏多はと言うと、話せたことが相当嬉しいらしく満面の笑みで握手を求めている。かすみが戸惑いながら手を差し出すと嬉しそうに手を握ってブンブン振っている。この光景どこかで見たことあると思ったら、先ほどの私とかすみのやり取りと同じだ。もしかしたら、この二人は気が合うのかもしれないと思うと嬉しかった。私も二人につられて笑顔になる。


「よし、紹介も終わったことだし、今日は三人で帰らない?」

「いいね、楽しそう。」


予想通り、奏多はすぐに賛成する。かすみは少し考えてから「今日は用事があるから、また今度誘って。」と言うのでその日はいつも通り二人で帰ることにした。


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