体育の後
授業の内容を聞き流しながら俺は外の風景を眺めていた。
雲一つない青空の下で太陽の光に照らされながらグラウンドで動く人影をみる。
一年生の体育の授業だろう。男女に分かれ男子は野球、女子はサッカーをしている。
そういえば俺も一年前はああして暑い中、外で必死に汗をかいて授業を受けていたなぁ、と思い出す。
楽しそうにプレーをする一年生たちを眺めながら授業が終わるのを待っていた。
グラウンドで片づけを始めた一年生たちを見てそろそろ授業が終わる時間なのだろうと悟る。
その後すぐに授業の終わりを知らせるチャイムが鳴り響く。
担当の先生が教室を後にしたのをきっかけにクラスメイト達が自らの席を立ち次の授業の準備を始める。
「おーい、次移動教室だろ。早くいこうぜ」
「今行く」
次の授業は教室ではなく理科実験室で行われるためこの休み時間の中で移動しなけれないけない。
授業で使う教科書などを持ち俺も自分の席を立つ。
廊下を歩いていると前の方から女子の集団がこちらに歩いてくる。
その横を通り過ぎようとしたら集団の中の一人が急に声を上げた。
「え、先輩!?」
声のほうを振り向くとそこには凛がいた。
「なんでそんなに驚いてるんだよ」
「いえ、まさかこんなところで会えると思ってなかったので」
そう言いながらしきりに髪を触ったりどこかソワソワしている感じが見られる。
そんな感じの凛はいつもと違う点がある。
それはいつもの制服姿ではなく今日は体操着に身を包んでいることだ。
「いつもの制服姿もいいけど体操着姿も新鮮でいいな」
「そ、そうですか?ありがとうございます」
そう言いながらはにかんでいる凛。
いつもはきれいに整っている髪の毛は体育のせいで少し乱れていた。
「少しじっとしてろ」
「えっ!」
凛の髪の毛を整えてやる。
これでよしっと。
「もういいぞ」
「あ、ありがとうございます...」
恥ずかしがりながらお礼を言ってくる凛。
だが急にハッとした表情で距離をとる。
「どうした?」
「いえ、今は近づきたくないといいますかなんといいますか」
「いつもはお前からくるくせにどうした?」
「今は状況が違うんです!」
何が違うんだろうかと思っていると周りにいた女子たちが答えてくれた。
「凛は自分が汗をかいてて匂うんじゃないかって気にしてるんですよ」
「ちょっ!!」
「さっきも頭をなでてもらってうれしそうな顔をしてましたし」
『先輩、どうやって落としたんですか?』
「ああぁぁ!!先輩も次の授業がありますよね!今日はこの辺で!!」
そう口早に言い残して友達と一緒に教室に向かっていった。
「あれが例の人か~」
「女の子の顔してたね~」
『かわいいな~』
「ちょっと黙って!?」
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