お見舞い 1
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感
震える指でインターホンのボタンを押す。
土曜日の今日、私は先輩の家の目の前に来ている。
先日、雨のせいで車道に出来ていた水たまりの水が跳ねて私にかかりそうになったのを先輩がかばってくれた。その時に先輩に抱き着かれて気が動顛してしまい先輩の傘を持って帰ってきてしまったのだ。
そのせいで先輩はびしょ濡れになりながら帰宅し風邪をひいてしまったのだ。メッセージで何度も謝り許してもらえたのだがこういうことはきちんと会って謝るべきだと思ったからここまできた。
先輩の家を知るためにわざわざ先輩のクラスまで行きクラスメイト達に聞きまくったのだ。
みんながみんな、微笑ましいものを見るような目で見てきた。だがおかげで先輩の家を知ることができた。恥ずかしい思いをした分得られたものは大きい。
そんなことを考えていると玄関の扉が開く。
「はい~」
そこから出てきたのはとても美人で妖艶な女の人だった。
その瞬間頭の中が真っ白になった。
「どちら様で?」
「えっと、先輩の後輩で...じゃなくて青井先輩と同じ学校の後輩で、あの、その...」
頭の中が整理できていないためかうまく言葉が出てこない。
この人は先輩とどんな関係なんだろうか、彼女だったりするのだろうかなど色々な考えが頭の中をよぎる。
件の妖艶な女性はというと
「あらあら、まぁまぁ」
と頬に手を当てながら微笑んでいる。
このままでは埒が明かないので思い切って切り出す。
「あの!先輩とはどんな関係性なんですか!?」
「私と海人の関係?」
海人...呼び捨てにするほどの仲なんだ。
「ふふ、そんな顔しなくてもあなたが思っているような関係じゃないわよ」
「え?」
「私は海人の家族よ」
先輩からお姉さんがいるとは聞いたことがない。
「先輩は一人っ子でお姉さんはいないはずですよね?」
「まぁ、お上手ね!私は海人の母親で青井紗雪です」
「...ええぇぇ!?」
先輩のお母さんがこんなに美人だったなんて聞いてない!!
でもお母さんがこんなに美人だから先輩もあんなにカッコいいのか。
「それにしてもあの子も隅に置けないわね~。こんなにかわいくて素直な子が彼女なんて」
「かの...!?まだ彼女じゃないです!!」
「まだ、なんでしょう?」
「いえ、それは言葉の綾といいますかなんといいますか...ゆくゆくはそうなりたいなーというだけで...」
自分で言っててとても恥ずかしい。ドキドキしすぎて心臓が破裂しそうだ。
「あの子の方も満更ではないみたいよ。今日だってかわいい後輩が~って楽しそうに話していたんですもの。あなたのことでしょ?」
「それ、本当ですか!?」
「嘘ですよ」
「もう!意地悪しないでください!!」
本当にそうだったらと考えて舞い上がっていたことが恥ずかしくなる。
そのせいで紗雪が小さな声で言った言葉を聞き逃していた。
「『今日は』ね」
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