雨の日
下校時間になり荷物をバックに詰め忘れ物がないことを確認して教室を出る。
下駄箱に行き靴を履き替えて傘立てにある自分の傘を取り玄関をくぐる。
するとそこに見知った顔が一人立っていた。
「どうしたんだ?」
「あ、先輩じゃないですか!」
さっきまで落ち込んでいた顔に笑顔が見えた。
「そんなところに突っ立ってどうしたんだ?」
「実は傘がなくて...」
「今日朝からずっと雨だっただろ」
「そうなんですけど、傘立てに入れてた傘を誰かに取られたらしくて」
「あぁー」
よくあることだ。ああいう人のものを勝手に取っていく奴らはきっと取られた側の気持ちなんて考えてもいないんだろうな。
「どうするんだ?」
「親が迎えに来てくれるまで結構時間がありますし図書室とかで時間をつぶそうかなって考えてたところです」
「ならいっしょに行くか?」
「...へ?」
俺の提案が意外だったのかきょとんとした顔でこちらを見ている。
「だから、一緒に帰るか?」
「そ、そげん付き合うたっちゃなかとに...」
「それ何弁?」
「博多弁らしいですよ」
「らしいですよって知らないのに使ってるのか?」
「先輩にいつか使おうと思って調べておきました!」
「それはどうも」
俺は傘を開き左半分だけ使う。
「ほら入らないのか?」
「いや、恥ずかしいといいますか」
「ならこの右半分は誰かほかの人の特等席になってしまうがよろしくて」
「よろしくないです!」
そう言って飛び込むように傘の中に入ってきた。
そこから凛の歩幅に合わせるようにある歩く。
「先輩は誰かとこうして相合傘ってしたことがあるんですか?」
「それは家族は含む?」
「んー、家族以外で!」
「ないな」
「相合傘童貞だったんですか?」
「まぁそうだな」
「なら私が初めての相手ってことですね!」
「そうだな。凛が初めてでうれしいよ」
「あぅ...」
何やらうつむいてしまった。
「先輩はずるいです」
小声で何かを言っているが雨の音で聞こえない。
凛がバッと顔を上げた。
「私はどうだと思いますか?」
「ほかの男と相合傘をしたことがあるかってことか?」
「はい」
凛は客観的に見て魅力的だ。かわいい見た目もそうだが男の庇護欲をそそる何かを持っている。そんな人物がモテないか?答えは否である。
すでに高校に入ってからも何人かに告白されていてもおかしくはない。
そんな奴が相合傘をしたことがないか?
「したことあるんじゃないか?」
「正解はですね...」
凛が答えようとこちを開いた瞬間トラックがスピードを出しながら俺たちの横と通り過ぎる。
その瞬間車道にある水たまりの上を走ったものだから水が勢いよくい跳ね上がる。
「危ないっ!」
凛をかばうように水を防ぐ。
俺の背中に水がかかる。
「大丈夫か?」
「は、はい」
凛にはかかっていないことを確認し一安心といいたいがどうも凛の様子がおかしい。
「大丈夫か?顔が真っ赤だけど」
「へ!?だ、大丈夫でしゅ!」
盛大にかんだけど大丈夫らしい。
「で答えは?」
「え、あ、男の人にだ、抱き着かれたのは初めてですっ!!で、ではこれで失礼します!!」
そういって傘を持ったまま走っていった。
「それ、俺の傘...」
ずぶ濡れになりながら家に帰った。
翌日風邪を引いた。凛からはものすごい数のメッセージが届いていた。
まぁこんな日もあるよな。
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