ポッキーゲーム
「先輩!」
今日も今日とて後ろから現れた凛。
気のせいか今日は一段とテンションが高いと感じる。
「おー、どうした?」
「ゲームしましょう!」
「ゲーム?またいきなりだな」
いきなりのゲームの誘いを受けて驚きはしたがちょうど暇だし断る理由もないので了承した。
「何のゲームするんだ?」
「フフ、これです!」
そう言って凛が取り出したのはポッキーだった。
「それで何のゲームするんだ?」
「これでゲームと言ったら一つしかないですよね?ポッキーゲームですよ!」
「ここでか?」
昼休み中の中庭、しかも天気がいい今日は多くの生徒が昼食を食べている。
まぁ、俺たちがいる場所は木に隠れて周りからは見えにくくなっているのだが。
それでもそんな中でいきなり始めるのは恥ずかしい。
「ここでです!もしかして恥ずかしいとか思ってます?」
ニヤニヤとした表情でこちらを見てくる凛。
ここで引いたら負けたような気持になる気がする。
「わかった、受けて立とうじゃないか!」
「さすがです!」
袋から一本取りだして口にくわえる。そして俺と向き合う凛。
俺も差し出されている凛とは反対のほうを口にくわえる。
その状態のままお互いに動かない。ずっとこのままでは埒が明かないので俺が少し前進する。
すると凛も焦ったように前進した。
そのまま少しずつ近づいていき、目の前に凛の顔がある状態になった。
ここからは早く口を離したほうが負けになる。
俺が少し凛のほうへ近づく。凛はビクッと肩を跳ねた。
そして徐々に顔が赤くなっていくのがわかる。
凛はチラチラと俺の顔を見てくる。そして何かを決心したようにギュッと目を強く瞑り、勢いよく目を見開いたと思うと、残っていたポッキーを一口で口の中に収めた。
俺と凛との距離がゼロになった。
柔らかい感触が唇に伝わってくる。
「なっ!?」
凛は俺が口を離すと思ていたらしく驚いた表情をしていた。
「案外柔らかいんだな」
「い、今はそんなことを言う場面じゃないでしょうに!」
怒る凛を見ながら俺は笑っていた。