昼寝
授業を聞いている時ほど眠たい時はないだろう。
先生が黒板に書いていく呪文のようなものはちっとも俺の頭に入ることなく、現れては消えていく。そんな光景を半開きの瞼越しに眺めるだけの時間が過ぎていく。
昼休みになっても眠気が収まることはなく中庭にある木陰にシートを敷き横になる。高すぎず低すぎない気温に程よい風が体を吹き抜ける。
木の葉が風に揺れる音は俺を夢へといざなうBGMには十分だった。
♦ ♢ ♦ ♢
昼休みになり私は軽い足取りで二年生の教室に向かっている。お目当ての教室につくと探している人が見当たらない。クラスメイトさんに聞いてもどこに行ったのかがわからないと言われてしまった。
少し考えてある場所に向かった。
するとやっぱりというか分かりやすいというか先輩がいた。
シートの上で気持ちよさそうに寝ている先輩を見下ろす。その顔はいつもの優しい先輩の顔ではなくどこか幼い子供のような顔だ。
かわいいなーと思いつつその顔を眺める。
起こすのは気が引けるしかといってこのままではせっかく会いに来たというのにもったいない気がする。
どうしたものかと悩んでいるとふとあることを思いつく。
私は先輩の横に腰かけ周りに誰もいないことを確認する。
淡い期待を胸に秘めて私も横たえる。
♦ ♢ ♦ ♢
目を覚ますとやけに腕が重い。視線を横に移すとそこには俺の腕を枕代わりにしている一人の女子がいた。
スースーと一定のリズムを刻む寝息をたてているのは凛だ。どうして凛がここにいるんだろうかという疑問が浮かんできたが気持ちよさそうに寝ている顔を見るとそんな疑問もどうでもよくなる。
起こさないように、割れ物を触るように優しく彼女の頭を撫でる。手にはサラサラとした髪の感覚が伝わってくる。
少し顔を近づけると触れ合ってしまいそうな距離にある凛の顔はいつもよりあどけないものだ。
さっきまで寝ていたのに凛の顔を見ているとまた眠くなってきた。欲に身を任せ再び夢の中へ。
その前に隣で寝ている凛に向けて「おやすみ」と言い彼女の前髪を浮かせ顔を近づける。
...さすがにこれはないか。
そう思い軽く彼女を抱き寄せるだけにした。柔らかい感触が腕に伝わってくる。
すぐに意識が薄れていく。
「いくじなし」
意識を手放す瞬間に俺の腕の中からそう聞こえた気がする。
この後二人は仲良く授業に遅刻したらしい~