七話 エリスは気持ちも最強だった
前回涼太のスキルを載せるつもりでしたが忘れてました。すいません。
移動開始から4時間後。
エリスがもうそろそろかな、と呟いて、御者台から俺の方を見た。
「だいぶ暗くなってきたし、今日はここら辺で野宿しよっか」
そう言えば、確かに暗くなってきた。空には月があるが、日本と違い街灯もないので周りは真っ暗で何も見えない。
そんな暗い中で馬車を走らせるのは危険なので、俺もここら辺で野宿するのに賛成である。
馬車を走らせながら、野宿するのに丁度いい場所を見つけて、馬車を止める。
俺は馬車を降りて机と椅子を準備した。そして、調理済みの料理を机に置き椅子に座る。
その後、エリスが座ったあと、料理を食べ始めた。
俺は料理を食べながら気なっていたことをエリスに聞く。
「なあ、エリスなんで俺をパーティーに誘ったんだ?」
俺が質問をすると少し顔が暗くなったが、すぐにいつもの顔に戻った。
「なんでって、強いから?」
「そんな理由だけでどこの誰かもわからない怪しい奴とパーティーを組んだりしないだろ?何か目的があって俺とパーティーを組んだんだろ?」
正直に言って謎だった。
事故とは言え人庭で全裸だったのだ。周りから見たらただの変態だろう。なのに、俺とパーティーを組んだ。なにか理由があるに違いない。
「...言った方がいい?」
「もし目的の為に俺とパーティーを組んだなら巻き込むつもりだったんだろ?それなら、言うのが早いか遅いかの違いだろ」
「確かにそうだね」
エリスは苦笑した後、真剣な顔をして、俺の方を向いた。だが、どこか悲しそな顔でもあった。
エリスは深呼吸をした後、口を開いた。
「リョウタとパーティーを組んだ理由はある魔物を倒すためよ。その魔物は悪龍と言われてるの。まあ大体の人は名前ぐらい聞いたことがあると思うけど...。私はそいつを殺すためにリョウタとパーティーを組んだの」
俺は悪龍について城で少しだけ聞いていた。
悪龍ーーそれはこの世界で人類の最終試練と言われている。
最終試練と言われている悪龍は合計で4体いる。
東西南北にそれぞれ1体ずついて、今は封印されているそうだ。
人類には封印するのが限界らしい。
なんでも封印するだけでも世界トップランクの魔術師が100人ほど必要らしい。
悪龍の内一体は数年前に一度封印が解け、もう一度封印されるまで人々を蹂躙していたらしい。
そう、人々を蹂躙したのだ。
そこまで思い出し、少し嫌な予感がしながらも、エリスに悪龍を倒したい理由について尋ねた。
するとエリスはさらに暗い顔になった。やはり、俺の予想が正しかったのだろう。
「私の住んでいた街がね悪龍に襲われたの...。
私の住んでいた街は地下に300人ぐらいが入れる場所があったの。
私は家族全員でその地下に避難したんだけど私のお父さんとお母さんは魔法使いでね、私と少し離れた場所で他の魔法使いの人と結界を貼っていたの。
でも、ドラゴンの攻撃に結界が耐えられなくて地面が崩れたの。所々無事な人はいたんだけど、何せ地下のスペース全てが埋まっちゃってね...助かった人は私を合わせて20人ぐらいだったの。
私のお父さんとお母さんは埋まって死んじゃったし、私がよく遊んでいた友達も全員死んじゃったの。私は私の全てを奪った悪龍を許せない。だから悪龍を殺したいの」
俺は胸が締め付けられたような気分になった。
もし俺がエリスの立場だったら同じように悪龍を殺そうとするだろう。絶対に不可能だとわかっていても。
自分の両親を殺されて、更には自分と仲の良かった友達も殺された。憎まない方がおかしい。
そしてもう1つ、エリスが俺とパーティーを組む理由が分かった。
エリスは悪龍を恨んでいる。
そして、エリスは悪龍を殺すためなら誰か分からない変態でも、自分より強ければパーティーを組むのだろう。
少しでも悪龍を討伐できる可能性を上げるために。
「すまない、辛いことを思い出させたな」
「うんん、大丈夫」
エリスが返事を返してきたあと、しばらくの間無言が続いた。
エリスは大丈夫と言っているが、今にも泣きそうな顔をしている。
そして、数秒後エリスは切り替えるように頭を左右に降った。
「悪龍はね、しばらく暴れ回ったあともう一度封印されたの。暴れ回った悪龍は西側にいる奴だったらしいの」
「そうなのか」
「リョウタ、協力してくれるかな?私は絶対に悪龍を殺さないといけないの」
エリスは不安そうな顔をしながら聞いてきた。俺はその顔を見て納得した。
パーティーを組む理由を話すことを躊躇ったのは逃げられるのが怖かったのだろう。
人類の最終試練の悪龍を一緒に倒して欲しいなんて言われたら普通なら断る。
何故なら悪龍を倒しに行くなど死ににいくようなものだからだ。
封印するのが限界の龍を倒すなど普通、不可能なのだから。
「考えはあるのか?」
「強い人を集めて悪龍に挑もうと思ってるの」
「それでは勝てないし、まず付いてくる人もいないだろうな」
「そうだよね...。今まで誘った人は皆無理だって言って逃げていった」
エリスは残念そうな顔をしていた。だが、強い人を集めて勝てるようならとうの昔に討伐されているだろう。
勝てるという秘策があるのならまだしも、確実に負ける案を提案されても付いていけないし、誰もついて行かないだろう。
だが、エリスは俺の仲間になった。そんな簡単にパーティーを解散したりはしない。
「俺はエリスとパーティーを組んでいるから、逃げたりしない。もし勝てる可能性の高い秘策があれば協力するかもしれない」
俺の言葉を聞いたエリスが、パァと顔を輝かせた。
「本当に!?」
「ああ、勝てる可能性が高ければ、だけどな」
「それで十分よ!」
エリスは俺の手を握ってきた。
そしてその顔を見れば誰もが好きになってしまうような笑顔で、とても嬉しそうにこう呟いたーーー
「ありがとう!」
俺は少し照れながらおう、と返事をして今日の夕飯のパンにかぶりついたのだった───。
誤字や矛盾があれば教えてください。
それと説明がわかりにくいところも教えてください。
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