四十五話 結界が破れる音はガラスだった
久しぶりの投稿です。遅くなってすみません。それなのに短いです。
やっと夏休みになったので頑張っていきます。
瞬間移動を使ったので、入口にすぐに戻ってこれた。
「え、どうなってるんですか?」
女性は周りをキョロキョロと見ている。
確かにいきなり景色が変わったらそうなるよな。
「俺のスキルを使って、出口に瞬間移動した」
俺の言葉を聞いて、女性は大きく目を見開いた。
「そ、そんなことが出来るんですか」
この言葉のあと、女性は小さくすごいですと呟いた。そんなに驚くことなのだろうか?
てっきり、転移石があるから転移魔法とかが普通にあるものかと思ったんだが。
確かに、図書館で読んだ本にはそんなスキル書かれてなかったけど。
まあ、そんなことはいいか。
今は取り敢えず、この女性を避難させなければいけない。
「ちょっと失礼」
俺はそう言って、女性を脇に抱える。
そして、軽く走る。結界へ行くためだ。
女性の方を見るとなにか叫んでいるように見えたが、音速を超えているので何も聞こえない。
「よし、着いた」
数秒で無事に結界へと戻ってこれた。
さて、どうするか。ダンジョンの外の敵を全て倒したとはいえ、戦えない人を結界の外に出すのはできるだけ避けたい。まだ危険があるかもしれないからな。
埋葬は出来るか。女性は冒険者だし。
「なあ、埋葬するか?」
「はい...」
少しデリカシーがなかったかも知れないが、こういう時にかける言葉が他に思いつかない。こういうシチュエーションは一番苦手だ。
女性の返事を聞いたので、埋葬の準備を始める。俺は土を掘る担当だ。
掘った穴に、死体を入れて土を被せる。
その時、女性は泣いていた。
その様子を見た俺は決心した。
こんなチートな力があるのだから、絶対に誰も泣かせないようにしようと。
*
埋葬を終え、手当も終えたので、することが無くなってきた。
「エリス、瑞希、どうする?」
「どうするって?」
「もう、やることなくなっただろ?」
「あー、そうだね」
「どうするんだ?」
瑞希は考える素振りを見せる。
「一旦ギルドに戻ろっか」
「そうだな」
そうして、俺達がギルドの方向へ走り始めようとしたその時だった。
ーーーパリん
と、ガラスの割るような嫌な音が聞こえてきた。ガラスの割る音が嫌な訳では無い。
音が聞こえたことが嫌なのだ。
よく考えてみてほしい。この辺りは一面廃墟、ガラスなんかが残っているわけがない。
それなのに音が鳴った。そして、この近くでその音が鳴るものは結界しかないのだ。つまり、結界が破られたということだ。
「おい、大丈夫か!」
俺は急いで振り返る。俺の結界がそう簡単に破られるはずがない。つまりかなり強敵だ。
そんな敵が来て、大丈夫なわけが無い。
つまり、既に死人が出ていた。
そこで俺は、自分へ問いかけた。
今さっき覚悟を決めたばかりじゃないのかと。
そう、ついさっきだ。さっき覚悟を決めたのだ。もう泣かせないと。それなのにいきなりこの有様だ。
「ほんと、俺はいつまでたっても平均的のつもりでいるんだろうな。チートを手に入れてるのに、何も出来なかった平均的の時と同じように過ごしてるし、ほんと、何してんだろうな」
俺は独り言を呟いた。そして、今は動いていない敵を強く睨みつける。
大きく、禍々しく、強い敵。
ーーー悪龍だ。
何故ここにいるか、分からない。
さっき倒した魔族が関係あるのかもしれない。だが、今の俺にはそんなことを考える頭はない。目の前の、敵以外考えておらず、視界に入っていないのだ。
俺は目の前の悪龍をただひたすら強く睨みつけたのだった───。
これからはできるだけ毎日投稿したいと思ってます。