四話 人気がない場所は危険だった
俺はレベルが上がったことによって、残りのスライム2体を一瞬で倒すことが出来た。
予定よりも早く敵を倒し終えたので、もう少し討伐をしようかなと思ったが、日が沈みかけていることに気づき、ギルドに戻ることにした。
戻っている時に俺は異常的 2の対象が身体強化だった事を思い出し、身体強化を使ってギルドに向かった。
すると身体強化を使用してから約4分後、脳内に直接
『土属性魔法がLv.1になりました』
『闇属性魔法がLv.1になりました』
『光属性魔法がLv.1になりました』
『剣術がLv.1になりました。』
と響いた。俺の予想通りである。
俺は最初、抑制的 2の効果で身体強化以外のスキルポイントは入手できる量が少ないので身体強化以外のスキルはレベル上げが困難だと思っていた。
しかしそれは間違っていた。
身体強化以外のスキルレベルを簡単に上げる方法があったのだ。
それは、身体強化を使用し続けることである。
なぜ身体強化を使用し続けることによって、他のスキルレベルを上げることができるか説明しようと思う。
まず、身体強化は異常的 2のおかけでスキルポイント入手量は100倍になる。それを平均的 2の効果で全てのスキルに均等にスキルポイントを分配することで、簡単に全てのスキルレベルを上げることができるのだ。
だが身体強化はMPを消費する。なので、長時間使用し続けるには、少なくないMPが必要なのだが、その問題は解決されている。
なぜなら、レベルが2に上がったことで少なかったMPが異常なぐらい増えたからだ。
ということは、かなりの長時間使用できるはずである。
なので俺はギルドに戻るまでぶっ通しで身体強化を使って移動した。
ギルドに着くまでには15分程かかった。
ギルドについてMPの量を確認してみるとまだ4150.65残っていた。15分程度では、ほとんど無くなっていない。
俺はMP量を確認したあと、受付嬢に討伐完了の報告をして、報酬をもらった。
報酬をもらった後俺は宿を探す事にした。
初めての宿なので少しだけ高いところにしようと思い宿を探していると、夕食と朝食ありで銅貨80枚の宿があったのでそこに泊まることにした。
夕食はパスタとピザが出てきた。実際にはパスタとピザではなく、パゼタとピエザと言うらしい。名前は違うが見た目も味も一緒だった。ただ一つ違うことがあった。
料理が───とてつもなく美味しいことだ。普通、異世界は料理のレベルが低くて困るという話がよくあるが、この宿の料理はそこら辺にある日本の料理店より断然美味しい。
この宿だけかもしれないが、この世界で味に困ることはないだろう。
俺はパゼタを食べてすぐに、美味し過ぎて少し涙が出た。だが俺はこの美味しい料理を冷ますわけにはいかないので、すぐに涙を拭いすごい勢いでパゼタとピエザを食べた。
夕食をすごい勢いで食べたあと俺は風呂に入ろうとしたが、どこにも見つからなかった。聞いたところによると、この世界にはあまり風呂は普及していないそうだ。
俺はそんなことを知らず、この宿主に風呂は無いのか聞いたら
「風呂なんか、スペースの無駄だ。風呂作るぐらいなら客を泊めるための部屋を作った方が儲かるに決まってる。そのまま寝ろ」
と言われた。俺がこの世界基準では小さいからか少し喋り方が乱暴だが、客の接客はしっかりしているので気にしないことにした。
だが俺は日本人で、さらに最近まで高校生をしていたのだ。そんな人間が風呂に入らずに過ごすなど耐えられるはずもない。
だから俺は人気が少ないところに行き、裸になり自分に向けてひたすらウォーターボールを打ち続けた。防御力が高くなったからか、自分の魔法だからかわからないが、ウォーターボールは全く痛くなかった。
俺が大体体を洗い終えた頃、いきなり声をかけられた。
「そこで何をしてるの!」
声をかけられたというより、怒られた。
姿が見えないが、声は女性であった。
さて、ここで確認だ。俺は今裸である。そんな姿を見られるわけにはいかない。見られた瞬間に逮捕である。俺はすぐに逃げようとした。だがそれは無理だった。
なぜなら俺は水を浴びるために服を少し距離のある場所に置いている。
その服の場所にさっき声を発したであろう女性が立っていたからである。
こういうシチュエーションに遭遇した時にとれる行動は3つだ。
1つ目、服を着ずに自分の部屋に戻る。
2つ目、自分の体を隠して女性に服を取ってもらう。
3つ目、女性に近づいて口を塞ぎ叫べないようにして、服をとって逃げる。
この3つである。俺は3つ目の行動をとることにした。だが、それも無理だった。
俺が相手の背後にまわろうとする前に、相手に攻撃されたからだ。相手のグーパンは鳩尾に命中し、俺は蹲った。すると、その様子を見た女性がまたもや怒り気味に叫ぶ。
「あなた、こんな所で何をやっているの!
しかも裸で!」
だが俺は鳩尾を殴なれて喋ることが出来ないのでうぅぅとしか言えない。
そんな俺に苛立ったのか女性がまたもや叫ぶ。
「答えなさいよ!ここは私の家の庭なのよ!私の庭になんで入ってきたのよ!」
俺は30秒ほどしてからなんとか痛みが収まったので、誤解を解くことにした。
「俺が泊まってる宿に風呂がなかったから、水浴びをするために人気がない場所を探してたらここについて水浴びしてただけなんだ。
あなたの庭とは知らなかったんだ」
「そんなこと信じれるわけないでしょ!」
「じゃあ何のためにこんな場所で裸になるんだよ。風呂以外の理由ないだろ?」
「いや、あるわ!」
「あるのか?あるなら言ってみてくれ」
「え、いや、その...、ほら色々あるじゃない...」
女性の声はだんだん小さくなって言った。
さらに声が小さくなるにつれて顔が赤く染まっていく。俺はその様子を見てこのまま行けば逃げられると確信した。
「色々ってなんだ?残念だが俺は全く想像出来ない。教えてくれないか?」
俺がそう言うと女性の顔がさらに赤くなった。それはもう真っ赤だった。それはもう湯気が見えそうなぐらいにだ。俺はこの状況から逃れられると確信した。だがその希望は一瞬で消えた。
「ああ!もう!なんでもいいでしょ!」
「ちっ」
俺は思わず舌打ちをしてしまった。このまま行けば女性から逃げてくれると思っていたが、彼女はもう吹っ切れたといった感じだ。
すると俺の舌打ちが聞こえたのか、女性が大きな声で俺に確認をしてくる。
「今完全舌打ちしたよね!?絶対したよね!?」
確認をする必要が無いぐらいハッキリと舌打ちをしたが、俺は目をそらしながら否定する。
「いや、俺は舌打ちなんかしない」
「いや、完璧したでしょ今」
「いや、してない」
「ああ、もう!してないってことでいいわよ。それでここで何してたのよ」
女性は本題に戻った。俺は面倒くさくなったので適当に返す。
「さっきも言ったが、水浴びだ」
「信じられるわけないでしょ」
「分かった。信じなくてもいいから、服返してくれ」
俺は相手に逃げてもらう前提だったので服を返してもらおうとしていなかったが、相手が逃げてくれそうにないので服を返してもらうことにした。すると女性が口を開いた。
「わ、私が服をとったんじゃないもん!」
「ああ、そうだな。じゃあ俺がとるからどっか向いてろ」
「い、いや私がとる。とるから近寄らないで」
「分かった」
俺は服を取ってもらい、それを着た。
そして、俺はこの場をどうやって逃げるかを考える。平均的な脳で。俺がうーんと考えていると女性がいい案が浮かんだと言った様子で話しかけてきた。
「1つ提案なんだけどいいよね?」
「なんだ?」
「1つゲームをしようと思うの」
「ゲーム?」
女性が妙なことを言ってきたので、俺は聞き返す。すると女性は、よくわからない提案をしてきた。
「うん、私と戦ってあなたが勝ったらこの件は無かったことにしてあげる。もし私が勝ったらあなたを警備に突き出す。どう?」
「どうって言われてもな…。俺的には嬉しい提案なんだが、そっちにメリットが無くないか?」
「本当にたまたまここに迷い込んで水浴びをしただけかもしれないから、チャンスをあげようと思って」
「そうか、じゃあその提案に乗らせてもらう」
俺は女性の提案に乗った。これが最善の手だろう。そして、女性がルールを説明し始める。
「ルールは相手を降参させること。もしくは気絶させること。相手を殺してはいけない。
武器の使用は良いけど、致命傷は与えないこと。制限時間はなし。魔法の使用は禁止、庭が大変なことになるから。このくらいかな?」
「分かった」
俺はそのルールに同意し、剣を構える。
初めて構えた時よりもしっくりくる感じがある。これは多分剣術スキルのお陰だろう。
剣を構えたところで女性を見る。俺は思わず固まりそうになった。
女性は武器を構えておらず、素手だ。そして女性は全く隙がなかった。
女性は俺の様子に満足したのか、笑っていた。そして、女性は笑った状態のまま開始の合図をする。
「はじめ!」
俺は始まってすぐに身体強化を使う。そして相手の様子をしっかりと観察する。
すると女性がいきなり消えた。そして次の瞬間には俺の目の前にいた。女性は俺の鳩尾を狙って拳を放ってくる。俺はなんとか横に飛び回避するが、完全に回避はできず、腕に少し傷ができた。
すると女性は楽しそうに笑いながら話し始める。
「へー、今の躱せるんだ。だいぶ手加減してるとはいえ、結構早いと思ったんだけどな」
「今ので手加減してるのか、しかもだいぶ...」
「そうだよ、君にはもう勝ち目はないよ」
女性はそう言ったあとまた消えた。
俺は直感で背中を守った。すると背中に剣を回した瞬間に剣が横に払われる。俺は全く抵抗できず、剣が手から離れてしまい、どこかへと飛んでいった。
そして、剣は音を立てて地面へと落ちた。
するとその音が聞こえた直後、脳内に直接
『レベルが3に上がりました』
『レベルが4に上がりました』
と響いた。俺は固まりかけたが、なんとか耐える。なぜいっきにレベルが2も上がったのかは後から考えるとして、俺はまず戦闘に集中する。
すると、驚くべき変化があった。女性の動きを全て捉えることが出来たのだ。俺はまず、走って剣を取りに行く。そしてすぐに女性に向けて剣を構える。すぐに女性は俺に向かって近づいてきて、剣を振るってくる。
今更だが、いつの間に剣を出したのだろうか?
だが、そんなことを気にしている暇はないので、すぐに忘れる。俺は女性が振るってきた剣を躱してから女性の腕を狙って剣を振るう。
俺の攻撃を見た女性は目を見開いたが、すぐに表情を戻して回避行動をとる。
しかし完全に避けきれるわけではなく、俺と同じように腕に少し傷ができた。
そして女性が俺と距離をとった後、驚いたと言った感じで口を開いた。
「まさか、2度私の攻撃を受けただけで完璧に防がれるようになるとはね。あなた何者?」
「ただの普通の冒険者だ」
「そこまでの実力があれば、かなりランクが高いんでしょ?」
「Fランクだ」
「バレバレな嘘ね」
女性は俺を睨みながらそう言ってくる。
だが嘘をついている訳では無いのでしっかりと言い返す。
「嘘をつく意味が無いだろ」
「じゃあ最近登録したとか?」
「ああ、今日登録した」
「それなら納得ね」
女性はうんうんと頷きながらそう返事を返してきた。しばらく頷いていた女性は、いきなり顔つきが変わり、真剣さが増した。
「今からは本気で行くわ。覚悟しなさい」
そういった瞬間、女性はまたしても消えた。そして右側から切りかかってきた。だが、今回俺は反応出来なかった。女性は早すぎたのだ。俺は仕方なく攻撃を受ける。攻撃は俺の右腕にかなり深い傷を残したのたで、右腕が使えなくなった。
俺は右手に持っていた剣をカランと音を立てて地面に落とした。
「降参する?」
「いや、まだだ」
「そうね、まだ行けそうね。まあ、腕は大丈夫よ。戦いが終わったらすぐ治療したあげるから」
「大丈夫じゃないだろ」
俺はなんとか、声を振り絞って答えた。
そして、俺は地面に落ちている剣を左手で拾い、もう一度構える。
その様子を見た女性は嬉しそうに笑っていた。
そして、また女性が消えた。次は正面だった。剣を前で構えていたので、俺はなんとか剣でガードすることが出来た。
すると、ガードした瞬間パリンと音がした。剣が真っ二つになったのだ。
その音が聞こえた直後、またもや、脳内に直接
『レベルが5に上がりました』
『レベルが6に上がりました』
『レベルが7に上がりました』
と響いた。俺はつい立ち尽くしてしまった。
それを見た女性が負けを認めたと勘違いして俺に降参することを求めてくる。
「残念だけど、あなたの負けよ。結構楽しかったんだけどね。降参しなさい」
この時、女性は涼太に巻き返されるなど、思っていなかった───。
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