十一話 1階層は一瞬だった
今回は短いです。それとダンジョン要素がほぼありません。
ダンジョンに入ると、狭い道が続いていた。
道が狭いので俺達は一列で進むことにした。
一番前が瑞希、2番目が俺、3番目がエリスだ。
俺はダンジョンに入ってまず驚いたことがあった。なぜ驚いたかというと、俺はダンジョンは地下だから暗いのだろうな、と思っていたが、予想と違い明るかったからだ。
ダンジョンの壁が光って狭い道を照らして、周囲をしっかりと確認できる程度には明るかった。俺が壁が光っているのに驚いていると瑞希がそう言えば、と言って俺に質問をしてきた。
「涼太はどうやってエリスさんとパーティー組んだの?」
「どうやってとは?」
「だって、エリスさんってSランク冒険者でしょ?あんまり言いたくないんだけど、涼太のステータスって低かったのにどうやってパーティーを組んでもらったのかなーって思って」
「ああ、なるほど」
俺は瑞希の質問の意味を理解し、どうやってエリスとパーティーを組んだのかを考える。
まず俺が不法侵入して、捕まりたくなければ勝負して勝てと言われて、勝ったらパーティーを組もうと言われた。うん、いえない。
俺はどう言ったものか、と考える。
そこでなんとなくエリスを見てみる。エリスは俺の視線に気づき、何を思ったのか起こったことをそのまま話し始めた。
「リョウタが、私の庭の中に裸で居たから警備に突き出して捕まえてもらおうとしたけど、まあ色々あって勝負することになって、
私が負けて、強かったから私の目的のために
パーティーを組んでもらったの」
「おい!?何言ってるんだ!?」
「え?説明しろって私の方を向いてたんでしょ?」
「ちがうわ!」
俺はかなり慌てていた。今の話を聞いて瑞希の雰囲気が全く別物に変わったからだ。
さっきまではいつも通りだっただが、エリスが話している途中から殺意のような物が溢れ出ている。俺が瑞希の方を見てみると、ものすごい怖い笑顔で俺を見ていた。
「涼太は誰か知らない女性の庭で何をしていたのかな?しかも裸で」
瑞希はかなり低い声で言ってきた。俺は慌てて返事をする。
「み、水浴びだよ」
「水浴び?他人の庭で?」
「他人の庭ってことを知らなかったんだよ」
「見たらすぐわかると思うんだけど?」
「暗くてわからなかったんだよ」
「いくら暗いって言ってもわかると思うけど?」
「分からなかったんだって、本当に」
「ふーん、どうだかねー。わざと庭に入ったんじゃないの?」
「わざと入ってメリットがなっ…うわ!?」
俺が話している途中に壁からいきなり矢が飛んできた。矢は壁から飛んできていて、よく見ると壁に穴のようなものが空いていた。
そこから飛んできたのだろう。瑞希は先頭なので1番被害が大きそうだが、全ての矢を腰に携えている剣で弾いていた。俺は、矢が飛んできているところを上から手でたたき落とすした。エリスは1番後ろだったので被害がなかった。矢が飛んでこなくなり、俺は罠を話題を変えるために使わせてもらおうと思った。
「ダンジョンは罠があるから、気おつけて進まないとな。今のやつぐらいなら簡単に気づかないとダメだったな。気を緩めすぎだ」
「涼太に言われても説得力ない」
「そうだな。リョウタも罠に引っかかっていたからな」
「うっ、ま、まあ、次からは気おつけようってことだ」
「うんそうだね」
俺は話をそらせたことに安堵の息を漏らす。
だが、瑞希は俺のそんな様子を見てからまたもものすごく怖い笑顔で、俺にとって恐怖でしかないことを告げてくる。
「さっきの話の続きはダンジョン終わってからだね」
俺は背筋が凍りそうになった。俺が悪いのは確かだが、これだけは逃げたい。
俺は瑞希の言葉に嫌な予感がしながらも、話し始める。
「今日は何階層まで行くんだ?」
「んー、10ぐらいは行きたいけど、時間的に無理だと思うから、8階層かな?」
このダンジョンは1階層ずつがかなり広い。
その代わり、いくつか下への行き方がある。
それでも1階層事にかかる時間は大体1時間半だ。8階層に行くならば12時間ほどだ。
今はまだ朝なので、順調に行けば行けるだろう。俺がそんなことを考えていると、瑞希が剣を構え始めた。
「何かいるのか?」
「うん、その曲がり角のところに3体いる」
俺はそう言って瑞希から、進行方向へと視線をずらす。俺達がいる場所から5m程先に曲がり角があり、瑞希によるとそこに魔物がいるらしい。確か、空間把握みたいな名前の能力で敵の位置とかを把握できる能力があったから、それのおかげで敵がいるがわかったのだろう。
俺はそんなことを考えながらエリスに声をかけて、瑞希から少し離れる。ダンジョンに来ているのは瑞希が鍛えるためなので、俺とエリスは出来るだけ邪魔をしないように、少し離れた場所に移動したのだ。
瑞希が曲がり角に近づくと、スライムが3体出てきた。だが俺が討伐したことがあるスライムとは色が違った。俺が草原で倒したスライムは青色だったが、ダンジョンで出てきたのは灰色だ。
俺はこの魔物は何なのかエリスに聞いてみると色が違うだけでただのスライムで強さも変わらない、と言われた。
名前はダンジョンスライムなんだとか。
そんな色違いのスライムは一瞬で倒された。
スライム(普通)は俺がレベル1の時に倒せたぐらいだからな、それと同じ強さのダンジョンスライムなんて一瞬で倒せるだろう。
曲がり角を曲がってみるとそこは今までの道より広くなっており、3人が並んで歩いても、問題なく進める広さの道だった。俺達は横に並んで進むことにした。
横に並ぶことによって話しやすくなったので、瑞希が聞きたいことをエリスに聞いていた。
「エリスさん、さっきの庭の話なんだけどさ。勝負に負けたってほんと?」
「最初は勝ってたと思ったんだけど、段々私の速さに反応されるようになって、最後は逆に私がリョウタの動きが見えなくなったの」
「え?涼太ってそんなに強いの?」
「すごく強いよ。キマイラ分かる?」
俺はエリスがまたもやいらないことを言いそうだったのでエリスを止めようとすると、瑞希がそれを止めてきた。
俺は流石幼なじみ、俺の行動をよく理解していらっしゃる、と思ったがこの話を聞かれるのは面倒くさそうなので頑張って止める。
「エリス、その話はやめようか」
「なんで?」
「面倒くさそかなりそうだから」
「なりそうかな?まあ、リョウタが嫌なら言わないけど」
「助かる」
俺はそうエリスに言ってから瑞希の方を見てみる。瑞希は不満そうに頬を膨らませて俺を睨んできている。
俺は内心、何これかわいい!と思ったが表情に出さずに瑞希に話しかける。
「まあ、俺の事はどうでもいいだろ?」
「どうでもよくないよ!」
瑞希が少し大きな声で俺に言ってきた。
それを見ていたエリスが両手をポンと合わせていい案が思い浮かんだ、みたいな顔をしてその案を発表してきた。
「一度私とリョウタで戦ってみましょうか?
そしたら、強さがわかります」
「いい案ですね!お願いします」
瑞希は上目遣いで俺の方を向きお願い!と言ってきている。俺はめんどくさいなー、と思いながらも、瑞希の上目遣いが見れたので仕方なくエリスと戦うことにした。
ダンジョンには魔物がいるのに危険だろ!と思うものの、まだ1階層なので強い敵もいないのであまり心配はいらない。
俺達は近くに罠がないかだけ確認して、戦闘の準備を始める。俺とエリスは10mほど離れている。俺は瑞希に準備が終わったことを伝える。するとエリスも終わったらしく、同じく瑞希に伝えている。
瑞希は両方の準備が完了したことを確認して
手を上げる。
「始め!」
瑞希がそう言いながら手を下げると、俺はエリスの元に軽く走っていく。
だが、それは瑞希やエリスから見てみると、
涼太は消えたように見えていた。俺はエリス後ろに回り込み、首に手を当てる。エリスは全く反応できずに、その場で立ち尽くしている。瑞希は俺が首に手を当てているのを見て、口をぽかんと開いて、呆然としている。
俺は速すぎなかな?と思った。エリスは直ぐに俺の方を向いた。
「やっぱり、強いね。速すぎて見えなかったよ」
エリスは褒めてくれたが、俺は面倒なので適当にレベル上がったからなと言っておく。エリスがまだ何か言っている気がするが気にしない。俺達は動かない瑞希に近寄る。
「瑞希?」
俺が声をかけると、ビクッと動いて俺に話しかけてくる。
「今のなに!?全く動き見えなかったんだけど!?」
「今のは軽く走っただけだが」
「今ので軽く!?涼太のステータスって低かったじゃん!?どうなってるの!?」
「まあ、色々あったんだよ」
「色々ってなに!?」
「まあ、取り敢えず進むか」
俺はこれ以上は長くなりそうなので無理やり話を変えることにした。こうして俺達はダンジョン探索を再開する。
その後何度かダンジョンスライムは出てくるがそれ以外に何かが出てくることもなかった。
そして今回は運がよかったのか、30分で下の階層に行く階段を見つけることが出来たのだった───。
今日で春休みが終わってしまいます。
足りない!全く足りない!
これからも投稿しますが、短くなるか、更新ペースが落ちます。
文が短くて毎日投稿か、文が長くて更新ペースが遅いか、どっちがいいのだろうか。
誤字や矛盾があれば教えてください。
それと説明がわかりにくいところも教えてください。
よければコメントと評価もお願いします。