Ⅸ 芽生え
ほんと久しぶりです
次で最終回です短いですが…………
あと一話ではございますがお付き合いいただけたら幸いです。
今日は待ちに待った休日!学校がない!ひゃはっ!
だからヒロと町に繰り出している。
いつも休日は……休日『は』というか休日『も』ヒロと過ごす。公園で遊んだり、お互いの家で遊んだり、どっかに出掛けたり。出掛けるときは大抵駅前のショッピングモールに行く。そこで服を買ったり、ご飯一緒に食べたり、ゲーセンで遊んだり。言行が大人っぽいヒロだけど、実は軽めのゲーマーだったりする。
残念ながら今日のお出掛けは買い物がメイン。というか僕の服を買いに行く。平日は制服でなんとかなるけど、休日まで制服を着ている訳にはいかない。ということでヒロが僕の私服を買いに行こうと言い出した。買い物はつまらなくて嫌いだ。いつも、ヒロが僕の服を選ぶのを待つだけだから退屈だ。僕には服の良し悪しやらセンスやらは分からないからヒロが決める。
が、今回はヒロに誤算があった。僕、つまりは『乙女』の服選び。ヒロは門外漢だ。
さっそくJCが行きそうなアパレルショップへ……入ろうとしたらヒロに止められた。
「え? なんで? 行かないの?」
「いや、俺男だし」
「えー、カップルみたいに入ればいいじゃん! 行こっ!」
「か、カップルって」
「良いから! れっつごー!」
ヒロの腕を引っ張って店内へ連行。ピンク7割の乙女空間。かわいいワンピースとか、アクセサリーとか、バッグとか、とにかくかわいい。男だったときもかわいいものは好きだったけど、今は思考回路も感性も女々しくなってるのか、かわいいものがキラキラと輝いているように見える。
とりあえず目的の服選び。センスは無いけど、『かわいい!』と思ったものをどんどん試着してみる。着せ替え人形になったみたいで嫌いだった試着も、今はいろんな服を着れて楽しい。まずい。本気で女の子化してる。
一通り気に入ったのは着終わったから他の服を探そうかと試着室を出ると、いつもの僕みたいに退屈そうなヒロの目と目があった。恥ずかしいからか少し頬が赤くなってるのがかわいい。
よし、からかってやろう。
「どれにしよっかなー」
なんて言いながら店内を散策するフリをする。フリ、というのは散策してると装いながらヒロの様子を伺ってるからだ。
ふむふむ、ヒロがフリフリのレースの服をじっと見てる。そういえばヒロは昔から、フリフリふわふわした服を着てる可愛い子がいたら目で追っかけていた。きっとフリフリ系の服がお好みなのだろう。
「これ可愛いしこれにしようかなー」
そう言いながらヒロが見ていた服を手に取り試着室に入る。
かわいいって言ってくれる、かな
フリフリの服は予想以上に着るのが大変だった。生地が薄いから破ってしまわないか怖かった。
でもそのかいあってか鏡で見た自分の姿は結構な美少女だった。よし、これならいける。
「ヒロー! どう?この服」
つまらなそうに店内を見渡していたヒロを呼ぶ。
振り向いたその顔がちょっと紅くなった。似合ってるかな?
「どうどう? かわいい?」
「…………まあ、かわいいん、じゃね?」
そっぽを向きながら言ったヒロの一言に胸がキュンとなる。どうしようすっごい嬉しくてドキドキしてやばい。キュン死ぬ。
「ふへ、へへへ! すいませーん! この服着て帰りたいんですけど!」
店員さんを待つ間もそのあとも、夜寝るまでずっと頬が緩みっぱなしだった。
明日明後日には投稿します。