Ⅹ 初恋は親友でした
長い間の割に10話だけですが、お付き合いありがとうございました。
「ヒロー!かえろっ!」
「あ、ごめん今日委員会ある。咲夜は無いの?」
「ないよ? ヒロのとこだけだよ、あるの。一番忙しいじゃん」
「マジかよ…………違うところ入ったら良かった」
「じゃあ行ってらっしゃい!その辺で待っとくね!」
「いや、結構時間かかりそうだし先帰ってて」
「えー、ヒロと帰りたい!」
「いいから帰れ。待たせるのも心配だし」
「はーい。ゆっくり歩いてくね」
「ん。じゃあ、また明日」
「ばいばーい!」
ふぅ…………
ヒロと帰れないとは…………あれ?初めてじゃない?1人で帰るの。そのうち追いついてくるかな、ゆっくり歩いてれば。
でも、一人で歩く通学路は広すぎて寂しい。
『女の子』になって、かれこれ十日ほど。最近よく思うことがある。
僕ってヒロのこと好きなんじゃね?
恋なんてしたことがないけれど、もしかしたら、僕がヒロに抱いてる感情は『恋』という名前のものなんじゃないだろうか。そんなことを最近よく考える。
てかヒロと一緒にいないと寂しくて死にそうになる。
寂しくたっていいじゃないか
兎だもの。
今までは友情とか家族愛とかだと思っていた感情。それが女の子になって、愛だとか恋だとかそういうのだと分かった。
多分僕は、ヒロのことが好きだ。
ただ、不安もある。女の子なんだから男の子を好きになるのはおかしいことじゃない。けれど僕は、ついこの間まで男だった。男が男を好きになるのは、おかしいことじゃないし、気持ち悪がられる謂れはないけれど、世間からそういう先入観が抜け切ってないのは事実だと思う。口では、自分は性別で差別しないと言っていても当事者になったらどうかわからない。そしてそれはヒロにも当てはまることで、
「気持ち悪いとか言われたらどうしよう……」
僕を困らせるのだ。
「何が?」
ふぇっ!!ヒロ!?
「にゃっ! ビックリさせないでよ」
「いや、委員会思うより早く終わったから追いついた。それより何が気持ち悪いんだ?」
「なんでもないよーだ」
「ならいいけど…………体調とか悪いならすぐ言えよ」
こういうところがキュンキュンするんだよぉ!!
「顔紅いぞ? 熱でもあるんじゃないか?」
コツン
あわわわわわわわ
ヒロの顔が近くに!!!!
「熱すごいぞ!」
誰のせいだと!誰のせいだと!大事なことだから3回言うよ誰のせいだと!!
ベタすぎるよ!
「大丈夫、ちょっと熱が出て頭クラクラして心臓が痛いだけだから」
「いやそれ重症だろ絶対! 病院行くぞ!」
「いやいや、冗談だから! 熱はさっきちょっと走ったせいで体温上がってるだけだし」
「大丈夫なら良いけど、本当に無理すんなよ」
そう言いながら頭をわしゃわしゃしてくるヒロ。正直やばい。非常に気持ちいい。そして幸せになる。やばい。語彙が……
「ヒロ、いつもありがとう」
「なんだよ、急に」
「いや、なんか……なんとなく?」
「あ、そう」
ぶっきらぼうに言いながら照れるところとかね!萌えるね!男子のことをかわいいって言う女子の気持ちが初めて理解出来たよ!
でもどうしよう、この気持ちをヒロに伝えたい。そしてなれるなら恋人に…………ね?
よし、冗談っぽく言ってみよう。そうしよう。最悪、『なんちゃって』って言えばなんとかなるでしょ!よし、思い立ったが吉日だ。
…………今日の僕のテンションおかしくない?
まあいい、やる!やってやる!だってヒロのことが
好きだから
「なんかさー、最近思うんだー」
軽く言わないと恥ずかしさで死ぬ
「何を?」
「いや、僕ってヒロのこと好きだなーって」
あ、やばい死ぬ。
「それは……恋愛感情の好きって意味?」
「ま、まあ………………」
そうに決まってんだろ!!
てかやばいやばいやばいやばい…………
引かれた?もしかして。でも今なら冗談でいける…………はず!
「な、なんちゃ――っ」
ちゅ
と、唇に柔らかい感触。そしてヒロの顔がすぐ目の前にある。そこから推測するにこれはキスだ!やっぱ僕って頭いい!!
じゃなくて!
えっちょっとまっていまひろにきすされてるんだけどえってかなんできょひったんじゃないのてかくちびるやわらかいしまつげいがいにながいしきれいなかおだなぁかっこいいなぁ
頭が働かない
そのままフリーズ約十秒
気が済んだのかヒロが唇を離す。
「ぷはぁ! じゃなくて、え、ヒロなんで!?」
「なんでって、え、咲夜俺のこと好きなんでしょ? 俺も咲夜のこと好きだし」
ちょっと顔紅くしながら言うヒロかわいい。
じゃなくて!!
「ヒロは…………僕のこと、好き、なの?」
「もちろん」
「僕、胸あんまりないよ?」
「気にしない。てかそこ?」
うん、大事。とっても大事。
「えっと…………僕あんまり可愛くないよ?」
「いや、可愛くないとは思ってないだろお前」
うん、僕かわいい。
「えっと、男子みたいに走り回るよ?」
「元気なのはいいことだ」
親目線!?
「えっとえっと、僕、ヒロより頭良いよ?」
「嫌味かよ」
もちろん。
「んー、僕、めっちゃ手がかかるよ? 自分で起きれないよ?」
「知ってる。俺が助けるし毎日起こす」
ちょっとキュンとした。はい。やばい…………
「元々男だよ?僕」
「それ一番大事だろ。で、だから?」
「気持ち悪く………………ないの?」
「咲夜は咲夜だ。男だろうが女だろうが俺は咲夜が好きだ」
ヒロの、こういうところが、僕は、大好きだ。
「へへっ! ヒロっ!」
「ん?」
「大好きっ!」
「ん。俺も」
この先にはいろんな問題があるかもしれない。法律とか戸籍とか子供とか、いろいろ。
もしかしたら急に男にもどっちゃうかもしれない。
でも、ヒロとなら、たぶん大丈夫だと思うんだ。
まあ、何はともあれ、
僕、 元橋咲夜の、
初恋は 親友でした
以上で物語は完結です…………たった10話ですが。
ヒロの話はいつかでるんじゃないかと思います。たぶん。
とりあえず、また番外編とかアフターとか書くかも知れませんが(自分がおまけ要素好きなので)、本編はここで終わりです。
咲夜は書いてて1番楽しかったなぁと感慨深いです。
なにはともあれ、ここまでお付き合いありがとうございました。
次のお話で会いましょう。




