Ⅰヒロの優しさ
なんで俺は小説を書いているんだああああああああああああ
チュンチュン チュンチュン
「おーい、起きろー咲哉」
小鳥のさえずりとヒロの声との二重奏が奏でられる。
「むにゃ………………あと二年たったら起こしてー」
「受験生になってるぞ」
「来来来世に起こして~」
「起きてんだろ、咲哉。早くしねーと。皆もう朝の支度終わりかけだぞ」
仕方がない。起きよ。
「ふぁ~~」
「起きたそばから大あくびかいてんじゃねーよ。ほら、さっさと支度しろ。先生に怒られっぞ」
ふと辺りを見回すといつもとは違う部屋。そっか。今は宿泊学習の最中だった。
宿泊学習というのは僕が入学した公立中学、榊原中学校の一年生が五月に体験する最初の宿泊行事並びに校外学習だ。曰く、集団行動の基礎を身に付けるための実践学習らしいのだけれど、入学して一ヶ月でやるのはどうだろう?僕みたいに親友が同じクラスにいればいいけど、友達がまだできていない人にとっては地獄だろうな~と思う。まあいっか、ヒロがいるし。ヒロさえいればいい。
「おい、咲哉。ボーッとしてないで着替えろ」
「めんどくさ~い。脱がしてー」
「それくらい自分でしろよ」
「ヒロがやって~」
「はぁ。しゃーねーなー」
「やたっ」
服を脱がしてもらう。
「ほい、手を上にしてー」
「服を脱がすのなれてるね。よ、プレイボーイ」
「バカ。お前がいっつも頼むんだろーが」
まあそうなんだけれども。朝、隣の家のヒロが起こしに来て、準備して、着替えを手伝って………というサイクルをかれこれ六年は繰り返してるなーと思う。感謝感謝だ。僕が女子だったら確実に惚れるだろうけど、ヒロにはそんな浮いた話は聞かない。何でだろうか。顔もそこそこいいし、僕には劣るが頭も良いし…………あれか、一日中僕がくっついてるからか。そりゃあ女の子もなかなか寄ってこれないな。僕のせいでヒロが青春を送れないなら僕もしっかりしなきゃな…………高校に入るまでには。
「おい、お二人さん。イチャイチャしてると本当に間に合わねえぞ」
イチャイチャか……最近甘えてないし、たまには甘えてあげようかなー。
「だってよ。ほら、自分でしろっ」
ううー。ヒロが着替えの手伝いという崇高な任務を放棄しやがった。最近僕のことを疎かにしてないか、こいつ。前も身長のコンプレックスをついてきやがって。昔はヒロだって小さかったのに。こっちが150の壁を頑張って登ったらあっさり165を越えやがって。生意気だ。前も、
「成長には個人差があるのっ。」
って反論したらクスクスしやがって。腹立ってきた。もう口聞いてやんない。
「おおい、置いていくぞー」
っとっとっと。ヤバイ。待って、ウサギは寂しいと死んじゃうから。
「先に行ってて、俺はこいつ待つわ」
「早く来いよー」
お、さすが僕様のヒロ。やっさしー。さてさて。でも早く歯を磨かないと本当に置いてかれちゃう。
ゴシゴシ磨く。昔歯磨きが雑すぎてヒロに怒られたっけ。そういえば皆行っちゃったからヒロと二人っきりだ。今こそ甘えてあげよう。
「ふはいっきいはえ」
「歯磨きしながらしゃべられても分からん」
「へもはんへいっはかわかっはえほ?」
「ふたりっきりだね、だろ?」
おおー、さっすがヒロ。グッジョブ。
「別に襲ったりしねーから」
何を言い出すんだか。なら少し付き合ってやろう。
「僕、ヒロになら抱かれてもいいよ?」
「ば、ばーか。お前はゲイか!」
焦ってる焦ってる。
「違うよ? でもヒロなら良いかな~って」
でもまあこれも本心かなー。いい男だよなー、ヒロ。ヒロに彼女できたらどうしよう。構ってくれないじゃないか。今のうちに思う存分甘えておこう。と、思い腕でも絡ませてくっつこうと思ったんだけど避けられた。ちぇ、残念。
「つ、つまんねーこと言ってないで、ほら、食堂行くぞ」
「はぁい」
ま、ヒロに彼女できたらそんときはヒロを奪えばいっか。あー。女の子だったら普通にヒロに甘えられるのになー。
引き続き新連載の投稿という名のテストからの現実逃避です。お付き合いいただければ幸いです。Kさんのもお読みください。では、感想お待ちしております。
↓ヒロ視点の初恋です。CAPTAIN.Kさんが連載しております。
http://ncode.syosetu.com/n7500dp/