第9 物語における自信。センスという幻想
突然ですがこれを読んでる皆さんに悪口です。
まず、あなたのセンスは大したことありません。自分をセンスの塊だと思っているならそれは幻想です。いますぐウニ頭の高校生にブレイクされてください。
ランキング上位に行きましたよ? ああ、そうですか、おめでとうございます。きっと書籍化したらすぐに打ち切られてしまう程度のセンスなので穴に隠れた方が身のためですよ。
とまあ初っ端からケンカ売って反感を買いつつ。いやあ、申し訳ありません。こんな始まり方をしたのは、何よりも「自分のセンスは大したことないんだ」と知ってほしいからです。
いや、実際は知りませんよ? ランキング上位に入って終いにはアニメ化、映画化するかもしれません。そんな類稀なるセンスの持ち主もこれを読んでる人の中にはいるでしょう。
しかし、おそらく大半はそんなこともない、ランキング上位どころか「入ること」さえ難しい人たちでしょう。もしくはランキングに入って書籍化しても、アニメ化や漫画化の話が出ないか打ち切られるか。そういう人が過半数だというのは、はっきり断言します。
いえいえ。恥じることないです。某週刊漫画雑誌は新連載続々投下して続々打ち切られていくじゃないですか。つまり「ブームを巻き起こす、人気作として活躍し続ける」なんて作品は本当にひと握りなのです。
長い前座で何が言いたかったか。それは、ただ1つ。
「あなたのセンスは大したことない、実に平均的な、作品作りを一度もしない人と同レベルだよ」
ということです。これでも反感買いそうですが、重要なのはこの先の「自信」のお話です。
さて、自信の前にこんなお話を。
心理学でこんな実験がありました。
2頭の犬に電気ショックが流れる機械を取り付けます。そしてそれぞれ別の檻に入れて電気ショックを流します。
片方の犬の檻には、押せば電気ショックが流れなくなるスイッチを(しばらくしたらまた電気ショックが流れます)。もう片方には、押してもこれといって何も起きないスイッチを。
電気ショックが消える方の檻へ入れた犬は、学習して「電気ショックが流れたらスイッチを押せばいい」と判断しました。もう片方の犬は「何をしても無駄」と学習しました。
この後、2頭の犬をどちらとも「スイッチを押せば電気ショックが消える」檻へ入れました。
すると、先ほど「電気ショックが消える」檻へ入れられてた犬は、自発的にスイッチを押しました。しかし、「何をしても無駄」の檻へ入れてた犬は、その後スイッチを押せば苦しみから逃れられる檻にいるのに、一向にスイッチを押そうとしなかったのです。
ここからわかるのは、「動物というのは何をしても無駄とわかったら何かしたらどうにかなる状態でも無気力になり何もしない」ということ。これは人間にも通用する話ですよ。
さてさて、こんな話をして何が言いたかったかと言いますとね。
物語を作るとき、そりゃもう「センス」は大事です。しかし「センス」は生まれ持ったものという認識があるため、書いて評価されなかったら「俺のセンスじゃ何やっても無駄」と思い始めます。こうなると無気力になり、筆を折るわけですね。
この話と、先ほどの「お前ら別にセンス良くも悪くもねーから」という話。この2つで何よりも主張したい、「自信を失くさない方法」は、
「今活躍している人も、生まれ持った才能は同じ。つまり、俺でも頑張れば同じ所に立てるかもしれない」
こう思い込むことです。釈然としない? そりゃそうでしょう、僕だって才能の差はあると思いますよ。どうしようもない差なんてどの世界でもあるって。
でも重要なのは「何が正しいか」じゃなくて「何を信じるか」。少なくともこう信じれば、「才能が違う。俺には何をやっても無駄」という意識から「まあ、確かに才能は無いしこの先どうなるかわかんないけど、でもみんな同じ土俵からスタートしたんだから俺でも頑張ればなんとかなるかも」って意識に変わって、頑張れる気がしません?
ちなみに今、センスに関してだけでなく日常生活レベルで自信を失くしている方。この話はあなたにも大事ですから、考えてみてはいかがでしょうか。
ちなみに頭の中で反論を模索したり「嘘に決まってる」とか考えている方々。あなたは「認知的不協和」の罠にハマってる可能性があります。まあこれは後々話すかもですが、その可能性は極めて低いため自分で調べてください。とりあえずこの罠にハマればタバコだって悪くないと思えるんですよ。
つまり話をまとめますと、
「物語における自信がなくなると、何をしても無駄と思うようになり筆を折る」
「そして物語における自信とは、そのまんま自分のセンス=才能への自信である」
「自信を失くさないためには、センスは平均的で今からでも育てられると思い込むことが重要」
「努力したら必ずうまくいく」には僕も違和感を覚えますが、「絶望しないで前に進む」のならそう思い込んだ方が良いのですよ。正しいかどうかじゃなく。
失敗したら努力のせいじゃないって言い切っちゃいましょう。




