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異暴  作者: チーズちくわ
2/2

遭遇

グロッカス少佐は大昔にあった「大戦争」を思い出していた。

人間とその他の種族で「対人戦闘」を行った大規模な戦争のことだ…

ドワーフやエルフは長寿のためグロッカス少佐やヘザー少尉など戦争を経験した者は少なくないという…

中でもDCQC(ドワーフ近接戦闘術)の教官であるグロッカス少佐は愛用のタクティカルトマホークで人間の特殊部隊を相手に一人で戦い全滅させたという噂があるほどの軍功がある人物だった。

「ここは戦場の匂いがせんな ナップ?」

グロッカス少佐はナップ工兵にこう問いかけた

「臭い化け物の匂いばっかですねぇ 少佐殿

まるで従兄弟のカップの靴下の匂いみたいですぜ」

ナップ工兵は軽口が大好きなドワーフだ

そして元爆発物処理班所属の爆発物のスペシャリストでありグロッカス少佐にこの分隊に引き抜かれた

「うるせぇぞ、クソ髭デブ!

C4の食い過ぎで脳みそが溶けたのか?」

人間のボブ伍長が口早に言った

「ニトログリセリンはママの味なんだぜ!伍長殿!MREよりよっぽどうめぇや!ガハハ!」

こうやってボブ伍長とナップ工兵は言い合う仲だが種族間を超えて仲がいいとも言える。

人間で衛生兵のミーナはこれまでみたことない異形の死骸を見て畏怖し同時に解剖したいという好奇心にかられたばかりだ。

グロッカス少佐に簡易解剖を要求したが却下されたことを悔やんでいる。

他の分隊員も各々のことを考えて索敵する中ナンツ一等兵は路地を抜けて広場に出た。

「やっと路地を抜けた!」心の中で安堵するナンツ一等兵だった。

広場の真ん中には噴水があり近くには露店があったが噴水の水は血で染まり露店にはパトカーが突っ込んでおりパトカーから人が引き吊り出された血の跡があった。

ナンツ一等兵はパトカーから鳴り響くサイレンと緊急事態を知らせる繰り返し再生の録音を流す無線を切り辺りは静寂に包まれた。

グロッカス少佐がラジオマン(無線兵)を通じて作戦本部と通信する間他の分隊員は周囲の哨戒を命じられた。

ナンツ一等兵は南にある食料品店にナップ工兵と対人用地雷とセンサーを仕掛けに向かった。

食料品店の入り口は鋼鉄のシャッターでふさがっていたが一部がまるで切り裂かれたように開いていたため侵入は容易だった。

しかし二人はなぜこの穴が出来たのかを知りたくてたまらなかった…

食料品店の中には街全体を覆う腐った肉のような匂いとは別にいろんな物が腐った匂いが混ざっていた。

血の跡はほとんどなかったが慌てて逃げ出したであろう買い物客のカゴやカートが散乱していた。

ナップ工兵が辺りに仕掛けを設置してる間ナンツ一等兵は工兵の背中を守ることになった。

ふと気がつくと何か足音が聞こえナンツ一等兵は身構えた。

一般兵用の単眼ナイトビジョンではあまりよく見えなかったが小さな人影を見つけた。

「生存者か!我々は連邦軍だ!

救助しに来た!」

ナンツ一等兵はそう声をあげたが迂闊だった。

相手が人の形を留めていることを忘れていたのである。

小さな人影は少女だった。

頭がぶよぶよのいぼになりかわっている以外は至って普通の少女だった。

「ウァァァァァァァァ!」声にならない奇声をあげながらナンツ一等兵は硬直してしまった。

少女「だったもの」は頭から鋭利な触手を伸ばした。

突然「ドォン!ドォン! ドォン!」

と銃声が鳴り響いた

ナップ工兵のブリーチング用のソードオフショットガンが火を噴いたのである!

普段は軽口をたたく工兵だが彼は殺しの経験があり躊躇はなかった。

ドアをぶち破る目的で使用されることもあるスラグ弾は少女「だったもの」の右腕を簡単に吹き飛ばし腹部にもめり込んだ。

ナンツ一等兵も狼狽しながら5.56mm弾を少女「だったもの」に30発分発射した。

少女「だったもの」は床に倒れ着ていた白のワンピースは血で真っ赤に染まった。

しかしナップ工兵がショットシェルの捨莢を終えると同時に少女「だったもの」は直立不動するのうな形で立ち上がった。

右腕の断面から触手が生え腹部から見えるべき内臓はいぼだらけになっていた。

ナンツ一等兵は声をかけたことを心底後悔しながらレッグホルスターに収まった拳銃に手をかけた。

彼の恐怖の夜は始まったばかりである。











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