アンテナが惑星に一つ
いつものように目が覚めると顔を洗い、歯磨きをして 1 F のリビングに降りる。
今日もありきたりな生活が始まる。
朝食のソーセージ・レタスサンドを作り、自分のコップに昨日と同じくらいのインスタント・コーヒーの粉末を入れた。
お湯をかけるとコーヒーになるあれだ。
リビングに降りた後はすぐにやかんに水を張って火をかけることにしているのだが、ときどき忘れてしまってコーヒーを飲めなくなる時があったりするのだ。
そんな時は牛乳を飲むことにしている。
今朝はそうはならなかったみたいだ。
朝食を済ませた後にやるのが家の外のアンテナを伸ばす仕事だ。
これは本当に大切なことでこれをやらないと誰とも連絡が取れないし仕事もできない。
人類が一人分の惑星に一人で住むようになってからは家の外のアンテナが情報源だ。テレビもラジオもこれを伸ばさなきゃ見れないのだ。
金持ちだったらアンテナは自動式だが、私はそうじゃないので手動だ。
この家はハンドルを回して伸ばしたり畳んだりするタイプなので、比較的楽である。
ここから 34 センテは離れているブラッケの家なんかは巨大なネジの頭をデカいレンチで力いっぱい回さなければ動かないらしい。とても大変そうだ。
エヴィンの家ではボタン式だったのだが、ある時アンテナのボタンをいくら押してもアンテナがうんともすんとも言わなかったという。
間の悪いことにエヴィンは自分のントルボ(携帯用情報端末の一種)を修理に出していたため、外部との連絡手段が完全に無くなってしまった。
エヴィンはその時生きた心地がしなかったそうだ。そりゃあそうだろう。
幸い修理されたントルボが 2 日後に届いたため何とか事なきを得たが、あと 1 ヶ月以上待たなければならかったり、修理済みのはずのントルボが動かなかったりしたらエヴィンはどうなっていただろうか。
想像したくない。
まあ、今となっては緊急通報装置のような第三、第四の連絡手段が出てきつつあるため、エヴィンみたいなことになる人は随分減ったと思う。




