第四章8
律と玲は連れ立って、いまだ戦闘が続いている砂浜へと戻った。そして玲が魔王軍を解散させることで、人間も魔物もそれぞれの場所へと自動で送り返された。そのとき律はシマキを見かけたが、満身創痍の状態で驚いた。後にハシスと合流し、さらに戦慄することとなる。
「ひどいケガじゃないですかっ」
ハシスは砂浜にうずくまっていた。衣服には所々赤黒いしみができていて、激しい戦闘をしたものと思われる。手当てをしようと律が駆け寄ると、ひらひらと手を振って制した。
「ちがうちがう。私は無傷だよ。結構疲れたけどね」
律は驚いて一瞬足を止めたが、すぐに近寄って確認した。ハシスの体には本人が言う通り傷はなく、衣服についた血はシマキのもののようだ。
「さすが、いい物を持ってるよね」
玲が平然とかつての仲間に声をかけた。ハシスが作る物の効果を十分知っているらしい。律一人がハシスの実力を測り損ねていたらしい。
「やあ、レイ」
ハシスが笑いながら見上げると、首を振って視線を逸らす。その視線の先にものすごい速さで近づいてくる女性が映った。
「レイ、心配していたのよ」
後ずさろうとしている玲を逃がさないように、飛びついて抱きしめる。
「ああ。本当に良かった。わたくしたち本当にあなたに会いたかったのよ」
ディナの言葉に視線を泳がせていると、再会を優しく見守る律が目に映った。玲が気まずい気持ちで視線を逆に向けると、立ち上がったハシスと目が合う。その視線を逸らせないまま、おずおずとディナの背に手を回す。
「ありがとう。二人とも」
玲の言葉を聞いてディナは体を放すと腕を引いた。近づいてきた玲の肩をハシスは優しく叩く。玲は嬉しそうに笑った。
三人はそのまま笑いながら話している。律はそれを少し離れて眺めていた。
「うまくいったナ」
「ええ」
いつの間にかオーブが隣に立っている。その向こうに見える森からは、ウィルとアルクが走ってきている。エレインは何処だろうと思っていると、すでに玲をかつての仲間から引きはがし間に入って立っていた。困惑顔の玲をよそに、エレインは二人をけん制している。
「あれ……」
「水のモノに気に入られるとああなル」
にやりと笑ったオーブに律は乾いた笑いを返すしかなかった。
「全部終わったからこの世界とはもうお別れダ。挨拶をしてくるといイ。俺はここで待ってル」
肩で息をしているウィルとアルクに向かって背中を押される。律は一度振り返って、すぐ二人のもとへと行った。




