第三章1
あけましておめでとうございます
この章で物語も中盤です。今年はもっと速度を上げて更新できればと思います。
本年もよろしくお願いします。
四人は賑やかに話しながら、丘を下って街を目指している。降り立った場所から見下ろせた街は崖下にあり、別の道を探す必要があったのだ。ウィルとオーブが交代で道しるべの魔法を使い、現在は暖かい木漏れ日を感じながら進んでいる。
「そういえば、もらった袋の中身、見てないわよね」
アルクの一言で、昼食休憩という名の荷物調べが始まった。中身は主に水と食料、布やナイフなどの実用品だった。
「あーあ。路銀はあんまりないのねぇ」
「す、すみません」
心底残念そうにつぶやくアルクに対して、ウィルは申し訳なさそうに縮こまった。すかさずオーブがアルクの頭をはたく。
「十分いただいてます。ほんとにギリギリでしたから」
律がウィルにそう言うと、彼は少し体の力を緩めた。
「まあね、ご飯は重要よ。でもさ、あんたの服代が貯まるのいつになることやら」
「それを期待してたんですか。自分で稼ぎますよ」
アルクの発言に驚いて律は目を丸くした。オーブも図々しい奴ダ、とまた頭をはたく。
「ふくだい、とは?」
「ああ、今私が着ている服の代金の支払いを待ってもらっているんです。なので薬草などを換金してお金を作っているんですよ」
ウィルは話しやすい律に疑問をこぼし、答えを聞いてうなずいた。そして何か思案しながら、目の前に置いてあるパンをとって口に運ぶ。オーブとアルクの言い合いを横目で見ながら、律も食事に手を伸ばした。
昼食を食べ終えてさあ行こうと皆が立ち上がる。歩き始めると、オーブと交代したウィルが律の隣に来た。
「あの、僕も薬草は見分けられるので、手伝ってもいいですか?洋服代だけじゃなくて、お金は必要でしょう?」
ウィルは遠慮がちに小さな声で言う。儀式のときは颯爽としていたが、元の性格はそうすぐには変わらないようだ。律は少し迷ったものの、アルクにも手伝ってもらっているしお願いすることにした。
話していて前にいる二人から少し遅れたため、律とウィルは走って追いかけた。いまだに言い合い、というよりもアルクが一方的に絡んでいる二人の姿を眺めそれぞれに話していると、夕方には街についた。
街の入口から通りを見ると、人も店も多くてかなり栄えているようだ。ジョウテンは魔王の直轄地に隣接した国のため、さぞ抑圧されているのだろうと思っていたから拍子抜けだった。
人波をかいくぐり今日の宿を見つけて一息つくと、四人は連れだって街を散策し始めた。ハンデルほどではないものの珍しいものもあり、見ていて楽しい。ちなみに値段は良心的だった。
次の日の朝早く、四人は森にいた。昨日街の様子を見て回ったが魔王が常駐させている配下の軍もよく規律が取れていて、アルクがいた街のように住民が困っているようには見えなかった。そこで資金稼ぎにやってきたのだ。
「あたしたち三人は慣れてるし、ウィル王子も経験があるんだよね。ここは別行動で時間を決めて集合しましょ」
「待ってください。経験があるとはいえ、ウィル王子を単独行動させるのは危険ではないですか」
森ではアルクが指揮を執る。とはいえ律はウィル王子を一人にするのは不安があった。何せ王子なのだから。一人でも大丈夫だと言い張るウィルを見ながら、アルクがしばらく考える。
「じゃあ、誰かと組むってことで」
「私と行きましょう」「リツさんがいいです」
アルクの言葉を聞いて、二人は同時にお互いのほうを見て言った。一瞬の出来事にオーブは何か言いたそうにしていたが、結局何も言わず四人は三方向へ別れた。
地面を見て歩きながら二人は無言だった。それも心地の良い雰囲気ではなく、気まずい感じであった。律はなぜ指名されたのだろうと考え、ウィルは頼りないと思われているのではと考えていることがその理由だ。
「あのっ」
突然の大声に前を歩いていた律は大げさに肩を動かした。すみません、と小さく言ったウィルに向き直って話を促す。
「あの、リツさんには王子って呼ばれたくないです。敬語もいりません」
律は突然何を言われるのだろうと身構えていたが、話を聞いて安堵した。
「なぜですか?」
少し口元が緩んでしまったが、そのまま理由を尋ねる。リツさんは勇者様だから、という答えに少しだけ引っ掛かりを覚える。
「でも、ウィル王子も王子様ですよね」
敬語を使わないとおかしい相手だろうと言外に言うと、ウィルは首を振った。
「それはそうですけど……。リツさんはこの集りのリーダーでしょう」
だから敬語を使うのは自分のほうだと言う。律としては基本敬語で話すし、アルクに対してもそうだしで困ってしまった。
「えーと、じゃあ呼び方だけ変えませんか」
首をかしげるウィルに、つまりウィル君リツちゃんと呼ばないかという提案をした。
「年はあまり変わらないでしょう?なのでまずは呼び方を変えて、敬語はそのうち外していくということで」
いまいち納得できない様子のウィルに対して、律は言葉をつづけた。
「それにせっかく年が近そうなので仲良くなれたらと思うのですが……」
少し照れた様子の律を見てウィルは少し嬉しくなった。つんと澄ました強い律のかわいらしい面を見れたように思った。
「わかりましたリツちゃん」
「ええ、よろしくウィル君」
ウィルがそう言うと、律は少し顔を赤くして返事をした。二人ともなんだか照れながら、薬草集めを再開した。




