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離れの若様  作者: 真木
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水無月

私はぼんやりと外を見ていた。梅雨のジメジメと滅入る雨もあがり、窓にはいつの間にか西陽が差し込んでいる。入院して3日。とくにやることのないからこうして窓を見ているしかない。もともと身体は強くなかったが、まさか入院することになるとは。

オレンジに染まった病室の中は殺風景なものだ。

隣には家の者が身の回りの世話をと送り込んだ女中、智香子がいる。

「具合はどうですか?」

ベットの端にある硬い椅子で黙って座っていた智香子はようやく私にそう聞いた。

「ああ。大丈夫だよ」

私は言った。

智香子はいつの間にか土鍋を持ってきた。 どうやら私がぼんやりとしている間にこしらえたらしい。湯気が立ち上り米の甘い匂いが立ち込めるが食欲がない私は智香子に背中を向けるように寝返りをうった。

「今日は食欲がないようですからお粥です。少しは食べないと。早く良くなりませんよ。」

智香子は匙で粥を掬い、息を吹きかけ冷ましてから覗き込むようにして私に食べさせた。心地よい温かさが喉を伝わる。

「智香子、私はまだ生きられるだろうか。」

ふと、何気なしに口から出た私の問は明らかに智香子を驚かせた。

「なに…をおっしゃっているのですか。当たり前じゃないですか。」

なんとかそう言った智香子はさも西日がまぶしそうに立ち上がるとカーテンに手をかけた。 手が少しだけ震えているのが見えた。

私は医者のカルテを盗み見て思いの外、悪い自分の病状を知っている。入院も長引くだろう。第一、特効薬も治療法もない病のようだった。

やりすぎたなと私はほのかに夕日色になった智香子の背中に笑いかける。

「困らせたか?私の事くらい自分でわかるさ。」

智香子は小声でわかるものですかと言って少し乱暴にカーテンを閉めた。私は脇の小さなテーブルに置かれた土鍋を膝の上に置いて口に運んだ。ようやく食べ物になれた舌がようやくほのかな甘みと塩気を感じた。それを見た智香子は嬉しそうに笑って、

「きっと、良くなりますわ。少し食べればそんなつまらない考えなど吹き飛んでしまいます。」

と私のためにお茶を淹れてくれた。


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