君と僕の距離
電話口の向こうから、声が聞こえてくる。
「ねえ、聞いてる?」
その声には、もちろん、聞き覚えがはっきりとある。
「もちろんさ」
俺は彼女に言った。
「じゃあ、何の話をしていたかを言ってちょうだい」
「今日の昼飯の話だろ。俺は、コンビニ弁当にでもしようと考えていたけどな」
「違うって。私との関係、どうするのって話」
確かに、それは問題だろう。
俺が彼女に告白をしたのは半年ほど前のこと。
でも、俺と彼女は別々の教室で、特に同じ部活だっていうわけでもない。
なんで俺が彼女に告白をしたのかということは、いまだに謎だが、それで今の関係を保ち続けているわけだ。
クラスのみんなには、いまだに知られていないはずの話だ。
「誕生日が同じ月だっていうことだから、まとめて誕生会開くって話が合っただろ。あのときにでもバラスか」
「やっぱし、そのあたりしかないよね」
彼女は、電話の向こう側で話を続けた。
コンという軽い音が聞こえてきたから、きっと壁に頭を寄りかからせているのだろう。
「どうするの」
「そうしようか」
そのタイミングが、一番だろうという話になって、俺は彼女との電話を切った。
誕生月は7月。
俺はその日に向けて準備を進めた。
そして、当日がやってきた。
「ではでは、今月誕生日のみなさん、ハッピーバースデー!」
1学年全員の中から、同じ誕生月の人が集められて、お祝い会が開かれた。
高校生にもなってこんなことをするのはどうかと思うが、数年前の生徒総会で決まった事柄らしく、そこそこ楽しんでいやっている。
「えっと、ではでは、プレゼントがあります」
司会を務めているのは、学年委員長だ。
学年委員長というのは、学級委員長から相互に選挙を行って選ばれる学年を代表する委員長だ。
プレゼントを交換する相手というのは、大体決まっている。
俺は彼女に送ることになっていた。
プレゼントの金額は1000円以内で、どんなものでもいい。
だから、俺は彼女が好きそうなものを贈ることにした。
「ほら、これ」
小さな袋を彼女に俺は手渡す。
「高価なものは買えないから、これぐらいだけど」
小さなブローチだ。
彼女は、そのブローチに収められているさらに小さな宝石に心奪われているようだ。
「カーネリアン。日本では紅玉髄と呼ばれているものさ。誕生石で調べてたら、どうやらこれがそのうちの一つらしくてね」
「ありがとうね」
お返しと彼女が俺にくれたのは、青色のペンケースに入った、万年筆だ。
「知り合いが万年筆を作ってて、1000円で作ってくれたの」
「そうか、ありがとな」
笑ってお礼を言うと、そんなことよりもと彼女は言った。
俺は、打ち合わせ通りに、彼女の前でプレゼントを持って、ひざまずいた。
「…俺と、付き合ってくれませんか」
2度目の告白。
周りはその声に気付いて、なぜか拍手をくれた。
「ええ、喜んで」
彼女は俺のプレゼントを受け取ってくれ、手を取って引き起こしてくれる。
それからほぼ同時に、キスを受ける。
恥ずかしいのやら、気持ちいいのやらで頭が混乱していると、静かに声が聞こえてきた。
「それは、さすがに外でやってくれや」
友人からの声で、やっと我に返れると、はにかむ彼女が腕の中にいた。




