1st story-熱血教師なんて嫌いだけどね
…かっこいい…
それが、彼の第一印象。
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桜舞う4月。新学年の新学期。
私は、窓側の席から、教壇で熱く語る先生を、何か物珍しいものでも見るかのように
見つめていた。
「初めまして!2年4組の担任になりました、遠村樹です!!」
始業式。新任の先生紹介なんか、毎年壇上も見ず軽く聞き流しているだけだった。
しかし今年に限って、何故かふと視線が壇上に行った。
そこには…彼が居たのだ。
「隣町のY中学校から来ました、遠村樹です!」
とおむら…いつき。なんかかっこいいな…。
興味を持って、話を聞いてみると、なんと2年生の担任だって。
ひょっとすると、私のクラスの担任になったりして…
しかし、少しして気がついた。彼は、かっこいいが…
背が低い。
推定160cmといったところだろうか。
私は1年の身体測定で167cmだったから、私よりも相当背が低いのだろう。
男は私より、背が高い人がいい。ずっとそう思っていた私は、彼は対象外だななんて
呑気なことを考えていた。
学級発表に移り、私は親友の麻璃と一緒に張り出された紙を見に行く。
「無いなー…ひょっとしたらあたし、2年に進級できなかったのかなー」
「そんなわけないじゃんか!!」
2人で笑いながら探していると、『2年4組』と書かれた紙に
『御崎麻璃』の文字を見つけた。
「あっ、御崎麻璃発見!!」「郷藤青葉発見!!!」
2人同時に言って、笑って顔を見合わせて、喜んだ。
「やったぁ、青葉と同じクラスだ!!」
「今年も麻璃と一緒なんてラッキー!!」
そして、ふと担任の欄に目をやる。
遠村先生とかいう人だったらいいな…と思いながら。
『2年4組 担任 遠村樹』
…あっ!!!
それを見透かしたかのように、麻璃が
「イケメン先生のクラスじゃん!」と囁いた。
…嬉しい。…って、あれ?なんで…
「さー、新しいクラスに行くから並べー」
学年主任の先生の声で我に返る。
「行こう、青葉!」
「あっ、うん!」
そうして新しい教室へと移動したわけだが…。
どうやらこの先生、かなりの熱血教師のようだ。
私は、熱血教師が苦手。暑苦しいし、自分の考えばっかり押しつけてきて、鬱陶しい。
…嫌だな、せっかくかっこいいと思える先生に出会えたのに。
それにしても、彼は本当に背が低い。壇上から見て分かるんだから相当低い。
こりゃ釣り合う以前の問題だな…。
「では出席を取ります!!今村祐君!…」
背の低い先生、高い私。どれだけ考えてみても、釣り合うはずはない。
…いやまてよ、さっきからなんで先生と釣り合うなんて考えてるんだ…?
先生相手に恋なんて、そんなわけない!しかも…一目惚れなんて…
「…さん!郷藤青葉さん!!」
ボーっとしてて、呼ばれてるのに気付かなかったんだ。私は慌てて
「はい!!」と返事した。
…よく聞くと、声、少し高いんだな。
学生服着てたら、周りの男子に溶け込んでそう。
なんか子供みたいで少し可愛い…。
「それでは、今日はこれで終わりになります。明日は色々と持ってくる物が多いので、
忘れないよう気をつけてください」
「気をつけ、礼」「さようならー」
1班である私は、今日だけ週直の教室掃除を任された。
しかし1班の連中は、終わるとすぐに教室を飛び出して部活に行ってしまった。
私だって部活あるのに!!
そして気がつくと、教室には先生と私、2人だけ。
えぇーいきなり2人きりですかー!?と驚いていると
「郷藤さん」と声をかけられた。
「…はい。」
心臓がドキドキドキドキうるさい。
変なの。一目惚れなんて、今まで絶対無かったのに。
「まだみんなの名前と顔が一致しなくって…郷藤さんで良かったんだね!!」
…へぇ…笑った顔、可愛いな…
「青葉…で…いいです」
無意識に口から出ていた言葉。
他の人よりも先に名前を覚えてもらう。
そうすることで、少しだけ、先生の『特別』になれる気がして。
「わかったよ、青葉!」
元気にそう言った先生。
やった!!
「週直ありがとうな、でも青葉も部活あるだろうから、もう行っていいぞ!」
もう少し一緒にいたかった…けど、
「はい!」
先生みたく、元気に返事をする。
先生、私…先生のこと好きになっちゃったかも…。