近畿地方のある湾岸部について
2050年、禁忌地方のある湾岸部に出来たIR施設で飛び降りが頻発した。
島の古老達は「アレの祟りだ」として恐怖した。
これは、そんな正体不明の事件に関する散話をまとめたレポートである。
ケース1:とある古都の古老の証言
「えぇ、私も当時はあの『祭り』に参加しましたよ。
丁度場所も近かったですから、3度ほど行きました。
今起こっているあの飛び降り事件については、神様の祟りでしょうね。
神様、知らない?あぁ、赤と青のね、フフ、調べてみて下さい。」
ケース2:大都市の湾岸部のある古老
「昔はね、ここにお祭りの会場があったんだよ。
そして皆が崇める神様が居てねぇ、アンタ25歳?
あぁ、それじゃあ知るはずも無いよねぇ。」
”祭り”と言う事はオリンピックだろうか。
しかし調べた所、この地でオリンピックが行われた形跡は無かった。
「と言う事は奇祭の類か…クソ、コレは骨が折れそうだぜ。」
私はその『神様』の正体についてを考えてみた。
赤と青で神様…ハロー・キティちゃんだろうか?
しかし残念ながら彼女からは何の怨念も感じられなかった。
「八方塞がりだ...。こんなの人間が調査出来る範囲を超えている。」
私はこの件についてをAIに丸投げする事にした。
『赤と青の神様は、Re:ゼロから始める異世界生活のレムとラムです。』
何と言う事だろう。レムとラムと言えば私もフィギュアを持っている。
よく神様は偶像化されるが、まさに彼女達は神格化されている。
ちなみに私は同じフィギュアを3種類持っている。
一つは保管用、一つは飾る用、一つは舐める用だ。
「まさか、レムとラムが飛び降り事件の原因だったとは…。
つまり、レムとラムと結ばれない事がわかった者達が絶望から、
IR施設から飛び降りているのか…。」
私は祈祷師の類を30人ほど呼び出した。
正直、どれが本物かわからないのでまとめて呼んでみたのだ。
便利な時代になったもので『拝み屋ドットコム』にて比較が出来る。
私は32ある業者の中から口コミの上位30社を呼び付けた。
祈祷師達はさすがは祈祷のプロ、既に余裕を見せつけている。
鼻をほじっている者、あくびをしている者、嘔吐している者。
皆一様にリラックスして余裕な態度を見せている。心強い限りだ。
「あの、ここにいる赤と青の神様が荒ぶって…」
しかし私の言葉を遮って、ある祈祷師が応えた。
「言わずとも良い。赤と青の神の正体は既にわかっておる。
ズバリ、それはキカイダーであろう。」
キカイダー!?私は驚愕した。なんと赤と青の神の正体は
いたいけな少女のレムとラムでは無く、キカイダーだったのか。
石ノ森章太郎原作の特撮ヒーローだ。
「あの、それでそのキカイダーが何故、このような呪いを?」
「それは、ハカイダーが裏で操っておる。」
ハカイダー!?キカイダーのライバル、黒い稲妻だ。
そうか、この近畿地方の湾岸部のIR施設で起こる一連の事件は
ハカイダーが諸悪の根源だったのか…。
集まった祈祷師達は皆一様に、"そうだったのか…"とシラを切っている。
皆さん、知っていたに決まっている。ただ謙遜しているのだ。
「あの、それじゃあハカイダーを早く祓って下さい!!」
「いや、それは叶わぬ。」
何と、これだけの祈祷師達をもってしても、ハカイダーは祓えないのだ。
私は絶望した。
「そんな、せっかく諸悪の根源が判明したのに、打つ手無しだなんて。
あなた達、それでもプロなんですか!?」
しかしよくよく聞いて見ると専業祈祷師はおらず、
皆一様にマクドナルドやモスバーガー、バーガーキングやゼッテリア等、
様々なファーストフード店で働きながら傍らで祈祷師をやっていた。
「プロじゃなく、プロアマだったんですね…それじゃあ無理なはずだ。」
ハカイダーはきっと、脈々とこの地に呪いをかけ続けて来たのだ。
もはや私にはどうする事も叶わなかった。
私は腹が減り、ドーナツ屋に向かった。
私のお気に入りは『ポン・デ・ミャクミャク』だ。
赤いドーナツ生地に乳首のような模様が描かれた性的な商品だ。
「うーん、どうしよう。もう解決の糸口が無くなったぞ。」
そんな私を横目に、商業施設でミニライブが行われた。
曲目は長年の名曲、コブクロの『この地球の続きを』だ。
これは私も大好きな曲で、何と私が生まれた頃からある曲らしい。
ーーー
(2025 未来見に行こう!)
当たり前に 空を飛べる 100年先を想像できるかい?
ーーー
やはり、何度聞いても良い曲だ。
25年後の私が聞いてもいまだに不可能な空を飛ぶと言う夢。
それを語っている、とても夢のある曲だ。
(IR施設から飛び降りた人達もきっと、空を飛びたかったんだろう。
ん、待てよ…?本当に飛び降りた人達は死んだのか?)
私は食べていたポン・デ・ミャクミャクを8割5分ほど食べ残し、
カバンの中にそのままでぐちゃぐちゃと入れた。後で食べるためだ。
(そうだ、飛び降りは発見されたが、その人達が死んだという報道は
どのこどもニュースでも聞いた事が無い!)
私は飛び降りた人達の生死を確かめる為に役所へと向かい、
戸籍を片っ端から調べ上げた。
飛び降りた人達の住所も名前もわからないから、とにかくがむしゃらに
あらゆる人達の戸籍を取り寄せた。その中から飛び降りそうな人の名前、
『空波戸部流』や『アイキャンフライ』を探した。
しかし残念ながらこの有り触れていそうな名前は全く見つからなかった。
「クソッ、チェックメイトか!
あと一歩で事件が解決しそうなのに!!」
その時、役所の職員が私に近付いて来た。
「あの、マイナンバーカードはお持ちですか?」
「持ってるワケが無いだろう!
私は不法滞在で隣県から越境してこの市役所にいるんだ。
マイナンバーカードは小学生の頃に、タイプカプセルの中に入れた!」
役所の職員は非常に驚いた顔をして、「抱いて」と私にすり寄った。
しかし私にはそんな気は無かった。
二日間だけ近くのホテルを予約して、少し楽しんだ後にサッサと出て来た。
私には色仕掛けなどと言うものは通用しないのだ。
「結局、全てはハカイダーの手の平の上で転がされているのか…。」
私は一か八か、服を全て脱ぎ五差路の交差点に立った。
「轢けるものなら引いてみろ!!
だが、轢いた奴はこの事件の真相を教えろ!!」
すると私に向けて給油缶を投げつけて来る男が居た。
「アンタ、そんな場所にいたら風邪ひくぜ。
缶の中を見てみな。アンタに必要な情報が入ってるぜ。」
丁寧に缶切りで開けると、中には見た事も無いプリキュアの絵があった。
「これは…?」
「来年放送予定のプリキュアだ。しかしコレは企業秘密だ。」
私は驚いた。男はアニメ関係者なのかと聞いた。
「いや、私は家で来年のプリキュアを予想して、
その絵を描く事を趣味としている者だ。
ちなみに正解率は0.07%だ。」
「0.07%だと!?一体、プリキュアシリーズはこれまで、
何万作品が放映されたと言うんだ!?」
「違う、そういう意味じゃない。
私は常にキャラクターにリボンを描いていた。
すると、プリキュア達にもリボンが付いていた。
そういう意味での正答率だ。」
「なるほど、侮れねぇな、アンタ。
これで大きく解決に近付いたよ。礼なんてしてやらないぜ。」
そう言いながらも私は、男の尻ポケットに無理矢理5ウォンを入れた。
「全ての情報を統合すると、この飛び降り事件の犯人は…」
私はいつの間にか、IR施設の裏口から海を見ていた。
「お前だ!ミャクミャク!!」
するとその声と同時に海から何百メーターはあろうかと言う程
とてつもなく巨大なミャクミャクが現れた。
空は真っ黒になり、彼はヘリコプターをバリバリ喰った。
「大正解~!!」
低く唸るような声。耳が千切れてしまいそうな非常に重い音圧。
更にはカレーとミントを混ぜてから3日間腐らせたような匂い。
「グッ、コレが積年の恨みの匂いか…。」
「キミ達さぁ~、この土地が誰のものだったか忘れたでしょ~?」
ミャクミャクは問いかけて来た。土地が誰のものかだと?
そんなもの、決まっている…!!
「土地は、モグラさんのものだーーーーー!!!!」
私は叫んだ。声の限り力の限り、漏らしても叫んだ。
「土地は、モグラさんのものだーーーーー!!!!」
更に私はもう一度、裏声で言った。
「土地は、モグラさんのものだーーーーー!!!!」
するとミャクミャクは体中が電気で光始めた。
ーーー
瞳の色も言葉も 違う
だけど 同じ願いを持っているはず
ーーー
コブクロの『この地球の続きを』の歌詞が聞こえて来る。
「そうか、わかったぜ。マリオとルイージは瞳の色も言葉も違う。
だけど、同じ願いを持っているはずなんだな。
それは、ピーチ姫を…」
「大正解~!!」
ミャクミャクはいつの間にか、千と千尋の神隠しの湯婆婆になっていた。
「ピーチ姫を、メロン姫に変えたいと思っているんだろう?」
しかし、既にミャクミャクは消えていた。
・・・・。
・・・・。
・・・・。
それから、25年の年月が流れた。
私はもう既にこの世に居なかった。
しかし、子供達はきっと語り継ぎ、歌い継いでくれるはずだ。
「この地球の続き」を。




