2、女狐と、孤高の従士
ラズライト川の戦いが象徴するのは、大公国の特殊部隊「霧氷の狩人」だった。彼らは古の魔法により、環境と同化していた。白銀の魔術礼装を纏い、深い雪と霧氷に完全に溶け込み、帝国軍から見れば、それはもはや定まった実体のない幽霊のようなものであった。
ラズライト川戦線の歩兵指揮官の一人が騎士ネーレだった。ガドリン湖北方を管轄とするカトレア騎士団の一員である彼女は、歩兵部隊の指揮を任され、ラズライト川を守っていた。
彼女は外国での戦闘経験もある。大公国宮殿騎士団を半ば追い出されるようにして外国へ行き、幾つかの騎士団を渡り歩いた。その後、大公国の自分の領地に引き込んでいた時に、この戦争がはじまった。カトレア騎士団に所属することになり、歩兵隊の指揮を任され、この地を守備している。
その際、カトレア騎士団長ルレープ伯爵に「ラズライトは守れるかね?」と聞かれたネーレは「大丈夫です。団長が退却を命令しなければ、ラズライトは持ちこたえます」と答えた。
彼女は、帝国軍の物量に立ち向かい、精神を削っていた部下たちから「姐さん」と呼ばれて慕われていた。攻撃には陣頭で指揮をとり、猟兵たちのオトリ役を率先して演じていた。
前線を視察する大公の使節、将軍の副官たちに、彼女は部下たちの手柄を、自分のことのように楽しそうに語っていた。
騎士ネーレの部下で、帝国軍の騎士と兵たちの間に恐怖の伝説として広まったのが、一人の孤高の従士モーリッツの存在である。彼は猟師だったが、帝国の侵攻により、猟兵として騎士ネーレの歩兵部隊に入った。彼はその驚異的な弓の技術と戦況を冷静に読む氷の瞳から、敵には「白銀の魔弾」と恐れられるようになっていた。ネーレはすぐにモーリッツを自分の従士とし、自分の判断で行動することを許した。




