第96話 海底神殿:暴走する記録装置
神殿の静寂を打ち破る轟音。
頭上から降り立った巨大な球体。
それは鋼鉄の塊のようでありながら、蜘蛛のような複数の脚を持ち、中心の“赤い眼”が不気味に光っていた。
『侵入者、確認。排除、開始。』
無機質な声が空間全体に響き、天井や壁の文様が連鎖的に光り始める。
瞬間、空間に重力が消えた。
カイルたちの身体がふわりと浮かぶ。
「無重力!? いや、制御フィールドが逆転してるのか!」
カイルは必死に姿勢を制御しながら、人型鎧ゴーレムの背部スラスターを噴かせる。
『対応モード:空間戦闘』
父の光が閃き、背中からワイヤーのような魔力糸を放ち、カイルの鎧を支えた。
その刹那、球体の表面が開き、数十本のレーザーのような光線が走る!
「来るぞっ!!」
カイルが叫ぶより早く、護衛ゴーレムたちが前へ飛び出す。
光線が彼らの盾に命中し、火花が散る。
「キキ、補助魔法を!」
「わかってるってば!」
キキの詠唱が響き、青白い魔力の膜が展開される。
それは光線を反射し、あたりに煌めく光の波紋を生んだ。
『……火力不足。モード切替――近接戦闘。』
球体の脚が伸び、刃のような先端が回転しながら迫る。
無重力の中で縦横無尽に跳ね回り、まるで踊るように襲いかかってくる。
「父さん、右から二本来る!」
『了解。迎撃開始。』
骸骨の父は両腕を交差させ、瞬時に魔力の盾を展開。
脚の一撃を受け止め、逆に肘打ちのような動作で反撃。
衝撃波が走り、鉄の脚が折れた。
だが、次の瞬間、球体の内部が開き。
巨大な赤いコアが露出する。
『危険反応、最大級ッ!』
父の文字が一斉に点滅する。
「……自爆モードか!?」
カイルの頭に、瞬時に戦略図が浮かぶ。
逃げるか、それとも止めるか。
だが、カイルは目を細めた。
「……まだ解析途中の“古代技術”を、ここで失うわけにはいかない」
カイルは両手をかざし、魔石の共鳴を最大出力に。
無数のゴーレムたちが一斉に赤く光り、球体を取り囲む。
「全員、魔力を送れッ!」
父の文字が光り、キキが叫び、護衛ゴーレムたちが一斉に魔力波を放つ。
赤と青の光が衝突し、爆音が空間を揺るがす。
神殿全体が震え、柱の光が次第に消えていった。
そして、静寂。
球体は完全に沈黙し、コアが割れて崩れ落ちた。
残ったのは、わずかに光を放つ古代の記録結晶。
キキがそれを拾い上げ、息を呑む。
「……これ、まだ生きてるわよ」
「よし……解析できれば、古代文明の技術が手に入る」
カイルは安堵の息を吐き、父の肩を叩いた。
『任務完了。……我、疲労感ハ無イガ休息希望。』
「ははっ……気持ちはわかるよ、父さん」
こうして“神殿の番人”との戦いは終わり、カイルたちはついに古代文明の核心へと一歩近づいたのだった。




