第93話 海底神殿:静寂の探索開始
海底を進む巨兵船が、ゆっくりと減速した。
その前方には漆黒と群青が溶け合う、巨大な神殿が姿を現す。
海藻が絡みつき、貝殻に覆われながらも、壁面には今もなお魔力の文様が脈動している。
「……ここが、海底神殿か」
カイルは緊張と興奮を胸に、静かに呟いた。
後方では母とリーナが、船の中からその光景を見守っている。
母は不安そうにモニターを握りしめ、リーナは目を輝かせて言った。
「ピーピー! おー!」
「ええ……でも危ないから、私たちはここで待ってるのよ」
カイルは通信越しに微笑んだ。
「母さん、リーナを頼む。すぐ戻るから」
「……必ず無事にね」
「もちろん!」
通信を切ると、カイルは父とキキを振り返る。
それぞれ潜水用の水中型ゴーレムに乗り込み、出撃準備を完了していた。
『潜行ユニット、全機シンクロ完了。いつデモ行動可能。』
「よし、行こう。目標、神殿の内部調査だ!」
ハッチが開き、青白い光を放つ水中型ゴーレムたちが次々と海中へ飛び出した。
推進魔石の光が尾を引き、深海を照らす。
まるで無数の流星が、海底を駆け抜けていくようだった。
神殿へ近づくほどに、圧力と魔力の密度が増していく。
やがて目の前に現れたのは、巨大な扉。
高さはゴーレム十体分。その表面には、砂漠神殿と同じ紋章が刻まれていた。
「やっぱり……同じ文明の遺跡だ」
キキが呟く。
カイルは深く頷き、放水型ゴーレムに指示を出した。
「高圧ジェット、最大出力! 扉を洗い流せ!」
轟音と共に泡が舞い、長い沈黙の末、神殿の扉がゆっくりと開いていく。
内部からは淡い光が溢れ、無数の泡が天へ昇った。
やがてその奥に、漂うような青い光球たちが姿を現す。
ふわり、ふわりと海中を漂い、まるでカイルたちを導くように道を照らしていく。
「きれい……でも、罠の可能性もあるね」
「そうだな。全水中ゴーレム、警戒体勢!」
父の骸骨ゴーレムが光を点滅させる。
『魔力反応、多数接近中。未知ノ個体アリ。警戒ヲ強化セヨ。』
カイルは深呼吸をし、操縦桿を握った。
「よし……行こう。海底神殿、第一層へ潜入だ!」
水中型ゴーレムの群れが動き出す。
海の静寂を裂く推進音。
カイルたちは光る道を進みながら、この深海の底に何が眠っているのか。
その真実を確かめるべく、ゆっくりと神殿の中へ消えていった。




