第90話 第三次ダンジョンアタック:第四層
砂漠の果て。
そこには、古代の王都が砂に半ば埋もれたまま静かに眠っていた。
崩れた柱、風に磨かれた神殿跡。
その中心に、巨大な石像が立っていた。
十数メートルを超えるその像は、まるで王のような姿で剣を構えている。
その両目に赤い光がともった瞬間――
砂漠全体が揺れた。
『敵性存在、魔力反応特大。名:守護神像。』
父の胸部ディスプレイに警告文字が走る。
「こ、こいつ……この前よりデカい!」
カイルは息を呑み、咄嗟に命令を飛ばした。
「護衛隊、前へ! 放水型、熱防御展開! 光るゴーレムは視界確保!」
その声に呼応し、無数のゴーレムたちが整列。
魔法陣のように動き始めた瞬間、
守護神像が右腕を振るった。
ドォォォン!!
衝撃波が走り、護衛ゴーレム数体が砂に沈む。
「くっ……前のやつとは比べ物にならねぇ!」
『出力300%増シ。戦闘補正、上昇。息子、慎重ニ。』
「了解、でも……やるしかねぇ!」
「全機、総攻撃開始ッ!!!」
地鳴りのような咆哮が響いた。
放水型ゴーレムが冷却弾を放ち、砂をガラス化させ、
護衛ゴーレムたちが斬りかかる。
キキは杖を構え、詠唱を始めた。
「〈風刃乱舞〉ッ!!」
砂を切り裂く風が、巨像の脚をわずかに削る。
しかし、守護神像は怯まない。
目の奥が赤く閃き、腕を振り下ろす。
光線のような熱線が走り、放水型の一体が蒸発した。
「やばい……魔力出力、桁違いだ!」
『息子、後退ヲ。再構成ハ我ニ任セ。』
父のゴーレムが前に出る。
その骨の腕が光を放ち、倒れた護衛ゴーレムを修復し始めた。
『我、前線維持ス。息子、狙エ。』
「……了解!」
カイルは深呼吸し、魔力を右手に集中させる。
父と考えた連結魔石制御。
まだ不完全な技。
それでも、今は使うしかない。
「魔石連結、臨界稼働ッ!!」
父の魔石と巨兵ゴーレムの魔石を連結。
全身が光を帯び、背中のパーツが展開、翼のようなエネルギー放射が広がる。
「喰らえええええええええッ!!!」
光の拳が、砂塵を突き破って守護神像の胸を直撃。
巨像がのけぞり、全身の亀裂から赤い光が漏れる。
キキの魔法がそこに突き刺さる。
「今よッ、カイル!!」
「行くぞ父さん!!」
『我、同意!!』
父の魔石補助で出力が跳ね上がり、
巨兵の拳が、神像の胸を粉砕した。
ドォォォォンッ!!
赤い光が爆発し、砂嵐が全方向に吹き荒れた。
しばらくして、静寂。
カイルたちは砂の中に立ち尽くしていた。
目の前で、巨像の頭部が崩れ落ち、
中心から一つの青白い魔石が転がり出る。
「……やった、のか?」
息をのむキキ。
父の胸に光が灯る。
『勝利確認。息子、良クヤッタ。』
「ふふ、まだまだだよ。次は……もっとスムーズに倒す。」
そう言いながらも、カイルの顔は満足そうに笑っていた。
砂漠の風が吹き抜け、青白い魔石が光を反射する。
第四層、攻略完了。
その先の第五層にカイルが家族に見せたかった景色が待っている……。




