第89話 第三次ダンジョンアタック:第四層・砂の王
ダンジョン第四層。
そこは、広大な砂漠。
灼熱の風が吹きすさび、視界は白く霞んでいる。
歩くだけで足が取られ、太陽のような照り返しが容赦なく体を焼いた。
「うわぁぁ……また、地獄じゃん……」
カイルは鎧ゴーレムの中でダラダラと汗を流しながら、うんざりした声を上げた。
『息子、体温上昇。脱水症状ノ危険。』
「いや、父さん、それ言われても……水、まだ?」
護衛列の中では、放水型ゴーレムたちが時折ミスト状の水を吹き出していた。
だが、その気休めの水しぶきも、熱風であっという間に蒸発してしまう。
「暑い~……もう帰ろっか……」
キキが額をぬぐいながら弱音を吐く。
「いや、ここまで来て帰れないって……! ボスの気配、もうすぐそこなんだ!」
その時だった。
地面がぐらりと揺れ、砂の海が巨大な波を立てた。
ズズズズズッ……!!
「な、なんだ!?」
砂を突き破って、巨大なサンドワームが姿を現した。
全長二十メートル、口の中は無数の牙が渦を巻く。
『敵性生物、確認。危険度B。』
「ふっ……やっと出たか!」
カイルの目がキラリと光る。
父がなにか言う前に、すでに彼の手は動いていた。
「よし、出力最大、拳で迎えてやる!」
強化型可変式巨兵ゴーレムの右腕が展開し、
高出力の魔力エンジンがうなりを上げる。
「行けぇぇぇぇッ!!!」
次の瞬間、轟音。
砂煙が舞い上がり、巨大ワームの胴体が空中で粉砕された。
地響きを立てて、残骸が砂の中へ沈み込む。
……静寂。
キキがぽかんと口を開けた。
カイルは汗をぬぐい、ドヤ顔で胸を張る。
「ふっ、ワンパン余裕!」
その瞬間、父の胸部ディスプレイがまぶしく光る。
『我、怒。』
「えっ!? ちょ、なんで怒るの!?」
『作戦会議、無視。敵ノ生態観察、無視。息子、自己満足優先。』
「うっ……だって、みんなの前で格好いいとこ見せたくて!」
『子供カ。』
「うぐっ……!」
キキは笑いをこらえきれずに吹き出す。
「ぷっ……カイルって、ほんとわかりやすい性格だよね!」
「う、うるさいなぁ! ちゃんと倒したんだからいいでしょ!」
リーナは家型ゴーレムの窓から顔を出し、手を叩いて笑っていた。
「にー!にー!」
その純粋な称賛に、カイルは頬をかきながら苦笑した。
「……まぁ、リーナが笑ってくれたなら、いっか。」
『反省度、50点。』
「低っ!」
そんな親子漫才を交えつつ、隊列は再び前進を始めた。
遠く、砂嵐の向こうに。
古代の遺跡が顔を覗かせている。
「やっと遺跡だ。第四層のボス。」
カイルの目が再び輝く。
その背後で、父の胸が控えめに点滅した。
『頼ムカラ、今度ハ“少シ”加減シロ。』
カイルは苦笑しながら親指を立てる。
「了解!たぶん!」
砂漠の太陽の下、笑い声が響き渡った。
明けましておめでとうございます。
『ゴレームはロボットです。』はまだまだ続きますのでよろしくお願いします。




