第88話 第三次ダンジョンアタック:第三層・炎
火山の奥へと進むカイルたちの前に、巨大な洞窟が現れた。
空気は焼けるように熱く、溶岩の流れる轟音が響き渡る。
その中心。赤い魔力を噴き上げながら、巨大な影が姿を現す。
「おいおい……この前よりデカすぎるだろ……」
カイルがごくりと唾を飲む。
全長三十メートルを超える、炎の鱗をまとった炎竜。
第三層の支配者にして、火山の王だった。
『警告:高熱反応、通常戦闘では勝率2%未満。』
「そんな計算出さなくていい父さん!」
カイルは額の汗を拭い、指令を叫ぶ。
「全ゴーレム、合体準備!!強化型巨兵モードだ!」
それは、カイルが砂漠神殿のデータを解析して完成させた新兵器。
強化型可変式巨兵ゴーレム。
百のゴーレムが一斉に光を放ち、組み立てを開始する。
腕部ユニット、脚部アーマー、胸部炉心、全てが組み上がり、やがて天井を突くほどの巨体が完成した。
妹リーナが母の腕の中で目を輝かせた。
「にー!にー!」
その声に、カイルは満面の笑みを浮かべる。
「見てろよ、リーナ。兄ちゃん、ドラゴンぶっ飛ばすからな!」
炎竜が咆哮した瞬間、溶岩が弾け、洞窟全体が赤く染まった。
その熱風を切り裂くように、巨兵ギガ・レギオンが拳を構える。
『出力最大、魔力炉、臨界突破モード。』
「了解ッ! ぶちかませぇぇぇぇッ!!」
轟音。
巨兵の右拳が白光をまとい、一直線に突き出された。
衝撃波が火山を割り、空気が爆ぜる。
炎竜が反撃するよりも早く――
その拳が胸を貫いた。
――ドガァァァァン!!
爆炎が吹き荒れ、竜の咆哮が掻き消える。
炎竜は一瞬で崩れ落ち、魔石が鈍く光りながら床に転がった。
「……ま、まさかのワンパン!?」
キキが呆れたように叫ぶ。
『戦闘終了。敵、原型ナシ。息子、加減ヲ覚エヨ。』
「え、いや、ちゃんとした作戦だったんだってば!」
カイルは苦笑しながら汗を拭った。
そんな彼を見上げながら、リーナが拍手する。
「にー!にー!」
その無邪気な声に、カイルは思わず笑みを零した。
「はは……ありがとな、リーナ。兄ちゃん、ちょっとやりすぎたけどな。」
洞窟の奥で、炎竜の魔石が穏やかに光を放つ。
カイルはそれを拾い上げ、そっとポケットにしまった。
「よし、ボス撃破完了。次は第四層、だな。」
光る溶岩の海を背に、巨兵ギガ・レギオンは静かに構えを解いた。
その巨体の中、父の光が小さく瞬いた。
『次回ハ、控エ目ニ頼ム。』
「はーい……」
キキと母の笑い声が響き、
第三層の火山地帯に、ようやく静けさが戻った。
来年も良い年になりますよう。
皆様の健康を祈りつついいお年を…。




