第82話 海を見せたい
夜、森の家。
カイルは机に肘をつき、ぼんやりと炎のゆらめきを見つめていた。
リーナは母の腕の中で眠り、父の骸骨ゴーレムは静かに椅子に座っている。
「……やっぱり、母さんとリーナにも海を見せてあげたいな。」
カイルの言葉に、キキが顔を上げた。
「え、海? また行くの? あそこ、結構地獄だったよ?」
「うん。でも……あんな綺麗な景色、二人にも見せたい。あの青と風は、きっと忘れられないと思うんだ。」
その声は真っすぐで、どこか少年らしい情熱が宿っていた。
父の胸部ディスプレイがゆっくり光る。
『賛同。我、海泳行動希望。』
「……いや、父さんは泳ぎすぎるなよ。」
カイルは苦笑しながら立ち上がり、作業台に並ぶ設計図を広げた。
そこには、新たなゴーレムの設計案がずらりと描かれていた。
まずは家型ゴーレム。
移動式の“コンテナハウス”。
中には寝室、調理台、そしてリーナ用のベビースペースまである。
護衛用ゴーレムに牽引される仕様で、まるで“歩く家”だ。
「これで旅の間も安心だな。」
次に、砂漠で得た古代神殿ゴーレムの技術を解析し、強化型巨兵ゴーレムを再構築。
従来のものより軽く、分解・再構築が容易になっている。
さらに……。
「今回は、海仕様にする。」
カイルが笑みを浮かべた。
巨兵ゴーレムの設計図には、巨大な推進器と浮力制御装置。
そして、可変式の船体構造が描かれていた。
「つまり、陸上戦もできるし……船にもなるわけだね。」
「そう。『可変型巨兵ゴーレム』変身機構つきだ。」
『変形確認。胸熱。』
「父さん、それ使い方間違ってるよ。」
それだけではない。
カイルは護衛型と放水型ゴーレムの生産ラインも再整備し、さらに水中型ゴーレムを新たに設計した。
流線型の外装に、尾ひれのようなスラスター。
まるで金属の魚のように、静かに泳ぐことを想定している。
「これで、海底まで安全に探査できる。……今度は“沈んだ遺跡”を見つけるかもしれないな。」
キキが頬を膨らませる。
「ねぇカイル、ちょっと待って。結局また冒険する気でしょ?」
「え、えーと……旅のついでに、ね?」
「はい出た、“ついで”って言葉。絶対メインそれだよね。」
母が小さく笑い、眠るリーナの頬を撫でる。
「でも、いいわね。海……私も見てみたいわ。」
その言葉に、カイルの胸が熱くなる。
「うん。じゃあ決まりだ。今度は家族全員で、海へ行こう。」
父の胸が明るく光り、文字が踊る。
『出航準備開始。』
カイルの笑みが深くなる。
新たな旅、家族と共に。




