第81話 制御片の解析と“目覚める遺産”
昼下がり、森の家には静かな魔力の音が満ちていた。
机の上には分解された黒鉄板と、淡く光を放つ水晶片。カイルの新たな研究対象だ。
「この制御片……魔力を流すと、構造を変える反応があるんだ。」
カイルは慎重に魔力を注ぐ。すると、水晶片の内部に幾何学的な紋様が浮かび上がり、薄い音を立てて震え始めた。
「おお……やっぱり反応した。」
『安定率七十八パーセント。制御可能。』
父のゴーレムが冷静に分析結果を示す。
しかし、キキはその光を見て眉をひそめた。
「ねぇ、カイル。なんか……嫌な音しない? “キィィィィ”って。」
「ん? 気のせいじゃ?」
その瞬間、水晶片が強く輝き、部屋全体に光の波が走った。
「うわっ、まぶっ!」
カイルとキキが目を覆うと、机の上の水晶片が宙に浮き、ゆっくりと回転を始めた。
まるで何かを“探している”ように、音を立てて振動している。
父親のディスプレイが光る。
『異常反応。座標探索を開始』
「座標? 何を探してるんだ!?」
カイルが慌てて制御を止めようとするが、魔力回路は逆流。
部屋のランプが一斉に明滅し、壁の魔導線が青白く光を帯びた。
「わわっ、これまずくない!? 止められるの!?」
「た、たぶんっ!! うおおおおおっ!!」
カイルが机を叩くようにして魔力を遮断する。
水晶片が大きく跳ね、床に“コン”と落ちた。
光が消え、部屋にようやく静けさが戻る。
「……あっぶな……。もう少しで爆発だったな。」
カイルが額の汗を拭うと、父のゴーレムがそっと手を伸ばし、水晶片を拾い上げる。
その胸のディスプレイが淡く光った。
『通信装置の一部。古代制御網に接続を試みた形跡あり。』
「つまり……古代遺跡の“中枢”が、まだどこかで動いてるってことか。」
カイルの声に、キキは目を見開いた。
「え、それってヤバくない? だって、遺跡の中枢って……要するに“頭脳”でしょ?」
「ああ。もしあの遺跡がまだ機能してるなら……俺たちが触れたのは、ただの入り口だったってことだ。」
カイルは無意識に拳を握る。
父のディスプレイがゆっくりと文字を描いた。
『我、再探索推奨。』
「……うん。でも今度は準備してから行こう。あの制御片、使えるかもしれない。」
机の上に戻された水晶片は、まるで眠るように静かに光を瞬かせていた。
それは、新たな冒険の合図のように。




