第79話 母の雷と父の反省
森の家が見えた瞬間、カイルは全身の力が抜けた。
長い砂漠の帰路を越え、ようやく帰り着いたという安堵が胸を満たす。
だが、家の扉を開けた瞬間、その安堵は粉々に吹き飛んだ。
「カイル!! 遅いわよ!!」
玄関で腕を組む母の声は、雷鳴のように響いた。
頬には疲労の色が浮かんでいるが、その瞳は鋭く、怒りを隠そうともしない。
「えっ……母さん!? いや、その、遺跡が思ったより深くて……」
「言い訳は聞きません!!もう何日、経ったと思ってるの!?」
「ご、ごめん……!」
カイルがしゅんと肩を落とす、その隣で、骸骨の父が静かに胸を光らせた。
そこに浮かんだ文字は、たった一言。
『我、反省』
ピカン、と神妙な光が家の中を照らす。 あまりにも素直すぎるその態度に、母は一瞬、言葉を失った。
そして、わずかに唇を震わせ、ため息混じりに笑う。
「……もう、本当に……あなたたち、そっくりね。」
奥の部屋から、赤ん坊の泣き声が聞こえてきた。
クレアがすぐに抱き上げると、リーナは小さな手をばたつかせる。
「まー、まー」
意味もなく声を出している。
「ほら、リーナも怒ってるわよ。お兄ちゃんが遅いからねぇ。」
「ごめんな、リーナ。心配かけた。」
カイルがそっと指を差し出すと、リーナの小さな手がぎゅっと握り返した。
その無垢なぬくもりに、砂漠で溜まった疲労が溶けていくようだった。
キキはそんな様子を見て、にやりと笑う。
「お兄ちゃん、完全に負けてるね〜。赤ちゃんの勝ち〜。」
クレアはようやく怒りを鎮め、苦笑を浮かべながら言った。
「……もういいわ。全員、水を浴びて。ご飯、作るから。」
『我、家族感謝』
父の胸に、再び優しい光の文字が浮かぶ。
その光が天井に映り、家全体を穏やかに照らした。
外では夜風が森を撫で家の中には小さな家族の温もりが、静かに戻っていた。




