第7話 小さな働き手
「よし……今日こそは」
まだ朝靄が立ち込める夜明け前。
俺は小屋の裏で、そっと両手をかざした。
「ゴーレム生成」
淡い光が灯り、小さな石ころたちがカタカタと音を立てながら組み上がっていく。
掌ほどのゴーレムが立ち上がり、ぎこちなく俺の方を見上げた。
以前より魔力の制御がうまくなり、崩れ落ちるまでの時間も少しずつ延びている。
今日こそ、もう一歩進める。
「……今日は“運ぶ”を試してみよう」
庭に転がる薪を指差し、命じた。
「薪を持って、ここまで運べ」
ゴーレムは小さくうなずくように動き、ヨタヨタと歩き出す。
両手で薪を抱え、慎重に、けれど確かに俺の足元まで運んできた。
その拙い姿に、思わず笑みがこぼれる。
「……やった。これなら畑でも使える」
その日、俺は思い切って昼間に試すことにした。
父が畑を耕し、母が水汲みに出ている合間を狙って、ゴーレムを作り出す。
そして、畑の端で命じた。
「草を抜け」
ゴーレムは小さな手で雑草をつまみ、ポトリと横に積み重ねていく。
一歩一歩は遅いが、確かに作業を手伝っていた。
「……カイル、それは……」
声に振り返ると、父と母が立っていた。
一瞬、心臓が跳ね上がる。
だが、二人の顔には怒りも恐れもなく、ただ驚きと、やがて柔らかな笑みが浮かんでいた。
「おお……これはすごいじゃないか!」
「まあ……本当に畑仕事を手伝ってくれるなんて!」
父は感心し、母は嬉しそうに微笑む。
「カイル、これは魔法の力なんだね?」
「う、うん……そうみたい」
俺は曖昧に答えた。
二人はそれ以上深く追及せず、“魔法の才能を持つ息子”として誇らしげに俺を見つめる。
「カイルが魔法を使えるなら、この開拓地で大きな力になる。村の皆も助かるだろう」
「ええ……神様が与えてくださった力なのかもしれないわね」
両親の喜びように、胸の奥がじんと熱くなった。
本当は魔法じゃない。俺の研究の成果だ。
けれど、二人が笑ってくれるなら、それでいい。
「……これから、もっと役に立つように頑張るよ」
拳を強く握りしめる。
まだ頼りない、小さな石の働き手。
だがいつかきっと、この手で家族を支え、この村を守る力になる。
そう信じて、俺は再び研究に没頭するのだった。




