第77話 地獄の行進
砂漠の太陽は、まるで敵意そのものだった。
カイルたちは壊れた巨兵ゴーレムを分解し、パーツを護衛ゴーレムたちに分担させ、宝物庫で得た大量の宝と一緒に運んでいた。
光るゴーレムの灯りは、熱気の中ではほとんど役に立たない。
放水型ゴーレムが絶えず水を噴射して気温を下げていたが、蒸気が立ちこめ、まるでサウナの中を歩いているようだった。
「……おい、これ……地獄だな」
カイルは額に汗を浮かべながら、砂丘を登る護衛ゴーレムの背を見上げる。
キキは首に布を巻き、顔を真っ赤にしながら答える。
「誰のせいだと思ってるのよ。宝、詰め込みすぎなの!」
「だって宝だよ? 置いてくなんてありえないだろ……」
「そのせいで進みが遅いのよ!」
父の鎧型ゴーレムは宝の山を背負い、胸部の光で短く表示する。
『……我、運搬要員……』
「ごめん父さん、それは言わないで……」
カイルは苦笑しながら、砂に足を取られる。
それでも行進は続いた。
ゴーレムたちは一糸乱れぬ動きで砂の上を進み、荷を載せた彼らの足跡が、灼けた地面にくっきりと刻まれていく。
途中、砂嵐が吹き荒れ、視界が真っ白に閉ざされた。
キキが魔法で風の流れを制御し、カイルは護衛ゴーレムたちに合図を送る。
放水型ゴーレムが水を霧状に噴き上げ、周囲の砂を固めて前進を助けた。
「……やっぱ、父さんいなかったら無理だわ」
『当然』と胸部に文字を浮かべながら、骸骨の父は宝を背負い直す。
ようやく砂漠を抜けたとき、カイルたちは全員がへとへとになっていた。
キキは杖を突きながら地面にへたり込み、
「……二度と砂漠には来たくない……」
小声でつぶやく。
カイルは肩で息をしながら、それでも笑った。
「でも……宝は全部、持って帰れたな」
その声に、父の胸部が再び光る。
『我々、勝者』
灼熱の地獄を越え、宝を抱えた親子と仲間の帰還。
その行進はまさに“砂漠の英雄譚”と呼ぶにふさわしいものだった。




