第74話 第五層の海辺
階段を慎重に降りるカイルたち。
護衛ゴーレムたちを前後に配置し、キキは魔法で周囲を警戒する。
「……暗いな……何も見えない」
カイルが呟いたその瞬間、空間がぱっと明るくなった。
目の前に広がったのは、透き通った水の海辺。
白い砂浜が広がり、潮風が心地よく頬を撫でる。
「え……海……?」
キキは思わず後ずさり、目を丸くした。
そして、父の骸骨。
普段は冷静沈着で表示文字しか出さない彼が、初めて足を止めた。
文字ではなく、胸部の光がゆらゆらと波打つように点滅している。
『……初めて見る水……』と、まるで心の声のように浮かんだ文字。
カイルは鎧型ゴーレムから降り、砂を踏みしめながら笑顔を見せた。
「すごい……第五層でこんな光景が見られるなんて!」
父の骸骨も、ゆっくりと砂に足を踏み入れる。
白い砂の感触、波の音、潮の香り……。
普段は畑だけの世界で生きてきた父にとって、すべてが新鮮で、少し戸惑いながらも楽しそうに見える。
『……海、こんなに広いのか……』
文字が一瞬小さく震え、まるで息を呑んだかのようだった。
カイルは歓声を上げ、砂を握って空に振ると、白い粒が光を反射して舞い上がる。
護衛ゴーレムもカイルの指示で砂を蹴り上げ、小さな砂煙の虹が海辺にかかった。
キキは海を見ながら微笑む。
「……ダンジョンの中の海ね……綺麗な海辺」
父も文字で『楽しむべき……だな』と表示。
初めて見る海に、彼も冒険者の一員として心を躍らせているようだった。
カイルは海辺を見つめ、胸の奥に冒険のワクワク感が満ちていく。
「よし……ここからが本番だな」




