第6話 両親に見つかる
その夜も、俺は小屋の片隅で石ころを並べ、魔石を胸に埋めた小さなゴーレムを立ち上がらせていた。
魔力の制御は以前より安定しており、今では五分ほど動作を維持できる。
「……よし、今度は歩け」
ゴーレムはカタカタと小さな足を動かし、三歩進んでぴたりと止まった。
その拙い動きに、思わず頬が緩む。
(これなら、もう少し複雑な命令も……)
ガラリッ。
突然、扉が開いた。
「カイル?」
「なにしてるの?」
父と母が、灯りを持って立っていた。
俺の目の前では、ゴーレムがまだ動いている。
逃げ場はなかった。
「えっ……」
母は驚きで目を丸くし、父は険しい表情でゴーレムを見下ろす。
「……これは、なんだ?」
ゴクリ、と喉が鳴る。
正直に『ゴーレム生成の研究』とは言えない。
この世界で“石の人形を操る子供”がどう見られるか、想像するだけで怖かった。
(落ち着け……言い訳を考えるんだ!)
俺は咄嗟に答えた。
「……ま、魔法の練習だよ!」
父と母は顔を見合わせた。
このルルーレン王国では、魔法の才能を持つ者は珍しくない。
だが、農民の子が使えることは滅多にないのだ。
「魔法……?」
母の声には、不安と驚きが混じっていた。
俺は慌てて説明を続ける。
「うん! ちょっとだけ魔力を流したら、石が勝手に動いて……! びっくりしたけど、きっと魔法なんだと思う!」
父は腕を組み、ゴーレムの残骸を見下ろしたまましばらく黙っていた。
やがて、深いため息をつく。
「……まあ、害があるわけじゃないか。だがカイル、危険なことはするな。魔法は便利だが、制御を誤れば命を落とすこともある」
「は、はい……」
母はまだ信じきれない様子で俺を見つめていたが、やがて小さく微笑んだ。
「……カイルにそんな才能があるなんて。少し、誇らしいわ」
俺は胸を撫で下ろした。
なんとか“魔法”という言い訳で通せたのだ。
だが同時に、心の奥に決意が芽生える。
(魔法ということにしておけば、研究を続けられる……)
こうして俺は、両親に秘密を完全に隠すことはできなくなったが、“魔法の練習”という名目で研究を続ける道を得たのだった。




