第66話 炎の竜との総力戦
広間の奥で、地鳴りのような唸り声が轟いた。
次の瞬間、闇の中から巨大な影が姿を現す。
赤黒い鱗、灼熱の眼光。翼を広げただけで空気が震える。
「……ドラゴン……!」
カイルは思わず喉を鳴らした。
キキは青ざめ、悲鳴に近い声を上げる。
「カイル、逃げるなら今のうちよ!」
だが、カイルは首を振った。
「ここまで来て逃げられるか。父さん、準備はいい?」
骸骨の父は胸の板に『合戦』と文字を浮かべて応える。
炎の竜が咆哮し、灼熱の火炎を吐き出した。
瞬間、カイルは叫ぶ。
「放水型ゴーレム、前へ!」
数体の放水型ゴーレムが一斉に水を噴射する。
火炎と激突し、爆発的な蒸気が広間を覆った。
「今だ! 巨兵、突撃!」
組み立てた巨兵ゴーレムが大地を揺らして駆け、ドラゴンの胸へ拳を叩き込む。
だが硬い鱗に弾かれ、火花が散った。
護衛ゴーレムたちは左右から回り込み、脚部を狙って槍を突き立てる。
「狙うのは動きを止めることだ!」
カイルの声に応じ、ゴーレムたちは連携して竜の足を拘束した。
キキは後方で詠唱を始め、風魔法で火炎の流れを逸らす。
「少しは役に立ってよ、アンタのゴーレム!」
「立ってるだろ! ゴーレム! もっと水を出せ!」
蒸気の中、ドラゴンが巨兵の腕を噛み砕こうとする。
「負けるな! 魔石出力、上げろ!」
巨兵の胸の魔石が紅く光り、腕が逆に竜の顎を押し返した。
骸骨の父は背後から大剣を振り下ろし、鱗の隙間を狙う。
硬い骨の剣が突き刺さり、竜が苦悶の叫びを上げる。
「よし、あと一押し!」
カイルは光るゴーレムを前へ進め、竜の眼を眩ませた。
隙を突き、巨兵が全力の拳を竜の胸に叩き込む。
衝撃とともに鱗が砕け、内部から巨大な魔石が露わになる。
竜は最後の火炎を吐こうと口を開けた。
「放水型、全出力!」
大量の水が竜の喉奥へと流れ込み、内部で爆発的な蒸気を発生させた。
轟音とともに、炎のドラゴンは崩れ落ち、赤い巨大な魔石を残して消滅する。
カイルは膝をつき、深く息を吐いた。
「……勝った……総力戦だったな」
キキは頭を抱えつつも、安堵の笑みを浮かべる。
「正気じゃないわよ、わたし達……でも、やったわね」
カイルは震える手で竜の魔石を拾い上げた。
それは今まで見たどんな魔石よりも大きく、強く輝いていた。




