第5話 研究と成果
朝は畑仕事、昼は薪割り、そして夜は両親の寝息を聞きながら。
俺の一日は、農家の子としての労働と、誰にも知られてはいけない“実験”で埋め尽くされていた。
「ゴーレム生成」
俺は手のひらに魔石を抱え、魔力を流し込む。
最初は数分で崩れ落ちた石人形も、今ではわずかに動作を維持できるようになっていた。
ぎこちない足取りで三歩ほど歩き、小石の腕を振るう。
カタ、カタカタ……。
それだけのことが、俺にとっては大きな進歩だった。
(魔力供給の流れを抑えて、命令をシンプルにすれば、消費を抑えられる……)
前世で学んだロボット工学の知識を思い出しながら、俺は試行錯誤を重ねた。
制御回路もプログラムも存在しない世界だが、代わりに魔力がある。
ならば“思考”で命令を与えるだけで、石の塊は動く。
だが、問題はまだ山積みだ。
動作時間は短く、魔石はすぐに濁る。
それでも、ほんのわずかに改良された成果が見えるたび、胸が震える。
「……あら、カイル、また寝不足なの?」
ある朝、母が俺の目の下の隈に気付いた。
「う、うん……昨日はちょっと眠れなくて」
笑って誤魔化したが、心臓は早鐘を打っていた。
俺の研究は誰にも知られてはいけない。
ゴーレム生成の力は、今の村では“理解されない”と本能的に感じていたからだ。
そしてある夜。
いつものように石ころを組み合わせ、魔石を胸に収めたゴーレムが、カタリと立ち上がる。
「よし……」
俺はそっと命じてみる。
「……右手を上げろ」
カタ……。
ゴーレムの腕が、ゆっくりと持ち上がった。
それは、俺が明確な意志を込めて命令し、初めて成功した“制御”だった。
「やった……!」
思わず声が漏れた。
これまで曖昧に動くだけだった石人形が、はっきりと俺の命令に従ったのだ。
その瞬間、夜空の星々がひときわ輝いて見えた。
俺は確信した。
これは、ただの子供の遊びじゃない。
いつか必ず、この力は“世界を変える技術”になる。
そう信じて、俺はさらに研究を続ける決意を固めたのだった。




