第57話 撤退の決断
赤熱の溶岩に囲まれた空洞で、火炎の魔人が唸り声を上げた。
その体から放たれる熱波が、人型鎧ゴーレムを包み込む。
「熱……やばい!」
カイルは操縦席の中で額の汗を拭う。
鎧型ゴーレムの肩や腕に溶けた跡がつき、金属の表面が赤く変形していく。
「このままじゃ……持たない!」
護衛ゴーレムたちは必死に敵の攻撃を防ぐが、炎の波動に耐えるのは限界に近かった。
キキが杖を振り、火の壁を操るも、火炎魔人の魔力は圧倒的。
「攻撃が通じてない……」
カイルの胸に不安が広がる。
もし、鎧ゴーレムが完全に溶けてしまえば、俺も危ない。
「……撤退だ!」
咄嗟に判断し、光るゴーレムたちを先行させる。
「護衛ゴーレム、時間稼ぎ頼む!」
カイルは不安を押し込め、強化ゴーレムを囮に残して、鎧ゴーレムを引き返させた。
炎の魔人が追いかけてくるが、強化ゴーレムが体当たりで攻撃を受け止め、敵の動きを遅らせる。
「……ごめん、でも生き延びるしかない」
カイルは後ろを振り返り、犠牲になる強化ゴーレムを見つめる。
その存在はまるで仲間のように感じられ、胸が締め付けられた。
父の骸骨ゴーレムも、板に『撤退優先』の文字を浮かべる。
「……わかってるよ、父さん」
カイルは強く頷き、鎧ゴーレムを急ぎ後退させた。
炎の魔人は怒りの咆哮を上げたが、光るゴーレムと護衛ゴーレムの援護で無事に通路まで退却。
溶岩の空洞を抜ける頃、カイルの胸には不安と悔しさ、そして決意が混ざり合っていた。
「次は絶対に……もっと強くして、倒す」
カイルは拳を握り締め、次の戦いに向けて思いを固めた。




