第56話 赤き地底
群れとの戦闘を終えた一行は、光るゴーレムを先導にさらに奥へと進んでいた。
第三階層の通路は入り組んでおり、壁や床に走る赤い鉱脈がじわじわと明るさを増していく。
「……なんだか暑い」
カイルが操縦席の中で汗を拭った。
空気がねっとりと重く、呼吸をするたびに熱が喉にまとわりついてくる。
やがて視界が開け、巨大な空洞に出た。
そこはまるで別世界。
足元には流れる溶岩の川、天井からは赤熱した鍾乳石が垂れ下がっている。
熱気が押し寄せ、思わず顔をしかめるほどだった。
「……これは完全に自然の洞窟じゃないな」
キキが額の汗を拭いながら呟く。
「魔力で環境を変質させてる。ダンジョンそのものが意思を持ってるみたい」
護衛ゴーレムが足を踏み出すと、カコン、と妙な音が響いた。
カイルはとっさに光るゴーレムを飛ばす。
その瞬間、床がガラガラと崩れ、下から炎が噴き上がった。
「トラップか!」
慌てて後退する一行。
もし、生身で踏んでいたら一瞬で炭だっただろう。
『警戒強化』
骸骨の父の胸の板に浮かんだ文字は簡潔だが、その背中はカイルの目にはどこか頼もしく見えた。
溶岩の川を迂回して進むと、奥から低い唸り声が響いてきた。
地面が震え、溶岩がボコボコと泡立つ。
「……来るぞ」
キキが杖を構える。
炎の中から、ゆっくりと姿を現す影。
それは岩と炎が混ざり合ったような巨躯。
火炎の魔物のような存在だった。
全身に赤熱した亀裂を走らせ、周囲の溶岩を纏いながら、こちらに睨みを向ける。
「……中ボス、ってやつか」
カイルは無意識に唾を飲み込む。
これまでのゴブリンや雑魚とは桁違いの威圧感だった。
光るゴーレムが敵を照らすと、魔人の胸に大きな魔石が埋め込まれているのが見えた。
それは今まで見たどの魔石よりも、強烈な輝きを放っていた。




