第43話 森の大穴
その日、父は街に行っていた。
魔石の換金や冒険者ギルドでの活動。
鎧を纏った父が街に通うのは、すっかり日課になっている。
だから森の探索は、俺とキキ、そして巨兵の役目だった。
「さて、今日は森のさらに奥だな」
巨兵のコックピットに乗り、俺は周囲モニターを見回す。
小型ゴーレムたちも隊列を組み、警戒しながら前進していく。
しばらく進んだ先で、景色が一変した。
「……カイル、見て!」
キキの指差す先には、直径数十メートルほどの巨大な穴が口を開けていた。
地底深くに続いているのか、底は真っ暗で何も見えない。
「……でかいな」
思わず息を呑む。
近づいてみると、穴の縁には削られたような跡が残っていた。
自然に崩れたものではない。誰かが、あるいは何かが掘ったのだ。
「自然の穴じゃない……古代遺跡か、魔物の巣か」
「どっちにしても危険そうね」
キキの耳がピクリと動き、警戒の色を示す。
巨兵に命じて穴の縁を探らせると、途中から岩肌は滑らかになり、人工的な通路のように続いているのが分かった。
「……中に何かあるなでも今は降りられない」
「そうね、何も用意をしてないから無理したら死ぬわよ」
その場には簡易的に目印を残し、探索は中断することにした。
帰路につきながらも、俺の頭の中にはあの大穴のことが居座り続ける。
「父さんが戻ったら相談だな」
「ええ、あの人なら“穴に落ちても骨は無事”とか言い出しそうだけど」
キキが皮肉っぽく笑った。
俺は苦笑しつつも、胸の奥に奇妙な期待と不安を抱いていた。




