第31話 商人ギルドでの交渉
ダスパの街の中心にそびえる商人ギルド。
石造りの建物は重厚で、入口には数名の商人が忙しなく出入りしている。
「ここがギルドか……」
俺は鎧ゴーレムの操縦桿を握り、胸部の魔石炉心を淡く光らせる。
街の人々から見れば、俺は大人の鎧を着た人物そのものだ。
中に少年が乗っているなど、誰も知る由もない。
「本当に、このまま入るの?」
キキが小さなため息をつきながら横に立つ。
「もちろん。大人に見えるし、威圧的に出れば舐められない」
俺は胸を張り、ゴーレムの肩幅を広げるように指示する。
門番や通行人は振り返る。
「なんだ、あの鎧……」
「デカいな……まさか魔物か?」
俺はゴーレムの姿勢を調整し、商人ギルドの受付前に立った。
「俺はカイル。持っている魔石を売りたい」
受付の商人は一瞬ひるむ。背後から現れた上司が厳しい目で俺を見る。
「……お前、金額の話をするつもりか?」
「大量の魔石がある。スライム、ゴブリン、オーク、狼。質も揃っている」
俺はゴーレムの胸部を少し前に押し出し、威圧感を強める。
街の人々には、ただの鎧を着た大人の人間としてしか映らない。
キキは横で耳を揺らしつつ、くすりと笑った。
「カイル……子供に見えないわ」
商人たちは鎧の威圧感に押され、表情を変える。
「なるほど……この量なら、相応の価格を提示せざるを得ない」
俺は頷き、ゴーレムの大きな手を差し出して契約書を受け取った。
周囲の人々は、少年が操縦していることなど想像もできず、ただ鎧を着た大人が堂々と交渉しているとしか思えなかった。
こうして、街の人々に“鎧を着た大人”として振る舞いながら、魔石の売却交渉は成功した。
資金も確保でき、旅の準備はさらに整った。
「さあ、次は調味料だな」
俺はゴーレムの操縦桿を握り直し、街の奥へと足を進めた。
キキはにやりと笑う。
「ふふ、やっぱりあなた、変わってるわね」
街の人々の目には、堂々と歩く大人の姿が映っていた。




