第30話 ダスパの街
森を抜けると、視界が一気に開けた。
遠くに建物の屋根が並び、人の気配が漂う。
守護巨兵は巨大すぎるため、森を出る直前に茂みの陰に隠した。森の外に姿を現せば、人々が騒ぎ立てることは間違いない。
「で、どうする?」
キキが肩越しに覗き込み、眉をひそめる。
「街に入る。だけど、俺は舐められたくない」
俺は守護巨兵ではなく、あらかじめ準備していた大人型の鎧ゴーレムへ乗り込む。
胸部の魔石炉心に魔力を流し込むと、ゴーレムがギシリと関節を鳴らす。
身長は大人とほぼ同じだが、装甲と鋭いデザインで威圧感は十分だ。
「……なるほど、これなら目立たないけど威圧感は出せるわね」
キキがうなずく。
街の入り口には門番が立っている。カイルの鎧ゴーレムを見て、少し身構えた。
「おい、何者だ……?」
「旅人だ」
俺は肩越しに答え、少し胸を張る。
魔力で鎧ゴーレムの存在感を増幅させ、威圧感を強調した。
「……ん? お前、金はあるのか?」
門番が問いかける。
財布を確認すると、持ち金はほとんどない。
「……足りないな」
「ちょっと、私が払うわ」
キキが手早く財布を取り出し、通行料を支払った。
「ありがとうございます」
俺はゴーレムの中から軽く会釈する。
門番は怪訝そうに俺たちを見つめながらも、通行を許した。
街に足を踏み入れると、露店の香ばしい匂いや人々の声が押し寄せる。
ダスパの街は賑やかで、木製の屋台や石畳の道が広がり、これまでの森とはまったく違う世界だった。
「さて……調味料と、魔石の売却だな」
俺はゴーレムの操縦桿を握り直す。
「ここからが本当の冒険になる」
キキは長い耳を揺らし、にやりと笑った。
「ふふ、いよいよね。さあ、カイル。見せてもらうわよ、あなたの魔法とゴーレムの力を」
俺は大きく息を吸い込み、街の雑踏に足を踏み入れた。
鎧ゴーレムに乗った少年。
これが、俺たちの新しい挑戦の始まりだった。




