第28話 旅立ち
朝靄が森を覆う。
森の奥に建てた家の前に、家族と仲間たちが並んでいた。
「……気をつけてね、カイル」
母クレアが微笑む。その腕には、まだ幼いリーナが抱かれている。
妹は何も分からないながらも、こちらを見て小さな手を伸ばした。
その隣には、骸骨となった父トットが立っていた。
骨だけの姿なのに、不思議と家族を見守る温かさがそこにある。
鍬を肩に担ぎ、ただ静かに頷いていた。
そして家の周囲には、大小さまざまなゴーレムたちが整列していた。
木材や石で作られた彼らは、まるで兵士のように無言で直立し、その空洞の瞳に淡い光を宿している。
「まるでお見送りの儀式ね……」
キキが呟いた。長い耳を揺らし、少し目を丸くしている。
俺は深く息を吸い込み、守護巨兵の胸部操縦席へと登り込んだ。
炉心の魔石に魔力を流すと、巨兵がゆっくりと唸りを上げて動き出す。
ゴゴゴゴッ……
地面が震え、巨兵が膝を伸ばして立ち上がる。
その姿にリーナが驚いて泣きそうになったが、母が優しく揺すって落ち着かせた。
「カイル、必ず帰ってきて。リーナも私も、そしてトットも待っているわ」
母の声が、巨兵の厚い装甲を通して胸に響く。
俺は操縦席の中から拳を握り、声を張り上げた。
「絶対に帰ってくる! 調味料もたくさん持ってくる!」
キキが苦笑しつつも、「そこ強調する?」と突っ込む。
だが、そのやり取りで緊張が少し和らいだ。
巨兵が一歩を踏み出すと、見送りのゴーレムたちが一斉に右手を上げ、まるで敬礼のような仕草を見せた。
その光景に胸が熱くなる。
こうして、俺たちの旅は始まった。
インダスパ共和国の街ダスパへ。
家族と故郷の森を背に、守護巨兵と共に踏み出した。




