第25話 再び歩み出す研究
骸骨の父を受け入れてしまった母とリーナ、そして俺。
唯一最後まで「いやいやいや!」と突っ込んでいたのはキキだったが数日経つと、彼女も口を噤んだ。
焚き火を囲んだある夜、キキはため息をついた。
「……もういい。アンタらが幸せそうなら、私がどうこう言う筋合いじゃないわ。
ただし! 私の価値観からすると、未だに背筋が寒いのよ!」
「ありがとな、キキ」
俺は素直に頭を下げた。
「……まったく……」
キキは長い耳を掻きながら、骸骨の父が黙々と畑を耕す姿を見やる。
「でも……あの骨、ちゃんと家を支えてるんだもんね。モヤモヤするけど、役に立ってるのは事実だわ」
こうして、俺たちの森での生活は少しずつ安定していった。
骸骨の父が農作業を担い、ゴーレムたちが狩りをこなし、母は妹を育て、キキは薬草や森の知恵を教えてくれる。
俺は再び、自分の「研究」に没頭できるようになった。
俺の出来ることと出来ないことをキキとまとめてみた。
研究を進める中で、自分の能力が少しずつ分かってきた。
まず、俺が唯一持つ“特異な力”。
魔石をただの道具としてではなく、感情をぶつけることで変質させられるのだ。
怒り、悲しみ、そして焦燥。
そうした感情を燃料にすると、ただのスライム程度の下級魔石が、より強い輝きを放つ核へと変わる。
それを核に据えれば、ただのゴーレムではなく「人工生命体」に近い存在を創り出せる。
さらに俺は複数のゴーレムを同時に操れる。
人が人形を一体動かすのが精一杯なら、俺は五体、六体と連携させることができる。
農作業も、魔物狩りも、集団で動かせば驚くほど効率が上がった。
……だが、出来ないこともあった。
特に“魔石同士の連結”。
異なる性質を持つ魔石を組み合わせ、複合的な力を生み出す。
これはどうしても出来なかった。
繋げようとすると、必ず砕け散ってしまうのだ。
「やっぱり、そこは私の方が上ね」
キキは小さく笑った。
「魔力の流れを組み合わせるのはエルフの得意分野。でも……アンタの感情で魔石を変質させる力は、聞いたことがない。どっちが上とかじゃなくて、分野が違うんだわ」
「そうか……」
俺は拳を握りしめる。
「それでも、もっと……もっと先に行きたい。妹と、母さんを守るために」
焚き火の向こうで眠る母とリーナ。
そして、畑から戻ってきて、ぎしぎしと音を立てて腰を下ろす骸骨の父。
その姿を見ながら、俺は決意を新たにした。
この森で必ず、新しい道を切り拓く。




