表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゴーレムはロボットです。  作者: 山田 ソラ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/131

第1話 赤子カイル

 やっと自分の名前がわかった。オッス、おらカイル。異世界特典なんかなかったんや。

 言葉の壁にも慣れ、ぼやけた赤子の視界にも順応してきたころ、目を開けると木の梁がむき出しになった天井が見えた。

 藁の匂い、そして焚き火の煙がほんのり染みついた空気。


「ほら、カイル。今日も元気だな」


 顔を覗き込んできたのは父親のトットだ。

 褪せた麻布のシャツに、膝へ継ぎを当てたズボン。腰には革紐を巻いただけの簡素な帯。

 労働で鍛えられた肩はがっしりしているが、指先はひび割れ、爪の隙間は黒ずんでいる。


 その隣から、母が優しく顔をのぞかせた。

 母の名はクレア。

 彼女も同じ麻布の服を着ており、袖口や裾のほつれが目立つ。けれど笑みは柔らかく、俺を包み込む手はどこまでも優しかった。


「ごめんね、カイル。お乳しか出してあげられないけれど……」

 

 母は申し訳なさそうに呟いた。


 彼らの暮らしは貧しかった。

 壁は土を固めただけで、隙間風が絶え間なく吹き込む。

 冬を越すには毛布すら足りず、家財と呼べるものは粗末な木の机と椅子、それに炊事用の鍋がひとつ。


 それでも、二人はいつも笑っていた。

 その笑顔が、俺にとって何よりも温かい。


 だが俺は、赤子でありながら前世の記憶を持っている。

 博士号を取ったロボット工学者としての知識も、神から授かったスキル《ゴーレム生成》も。


(……だが、魔石がなければ何もできない)


 この世界でゴーレムを生み出すには、魔石。魔物を倒したときに得られる結晶が必須だ。

 農民の両親が魔物狩りに行くはずもなく、赤子の俺にできるはずもない。


 だから今は考えるしかない。


(魔力を電力に、魔石をCPUに置き換えれば……構造設計は可能だ)


 俺は藁のベッドの上で天井を見つめながら、前世の制御理論と今世の魔力理論を頭の中で組み合わせていった。


 母はそんな俺を見て、くすりと笑う。


「この子、じっとしてるのに、なんだか考えごとしてる顔をするのよね」


 父が大きな手で俺の頭を撫でた。


「賢い子に育つぞ。きっと、俺たちの自慢の息子になる」


 俺はその言葉を胸の奥で反芻しながら、心に誓う。


 魔石を手に入れる日まで、設計を練り続けてやる。


 赤子の体は何もできない。

 だが、未来のゴーレムはすでに俺の頭の中で静かに動き始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ