第17話 裏切りの夜
開拓地に不穏な空気が漂っていた。
代官アルレスが視察を終えて去ったはずの数日後、夜陰に紛れて再び現れたのだ。
「……辺境伯の命は絶対。あの子の力を渡さぬというのなら、力づくでも」
アルレスの声に応じ、背後から現れたのは開拓団の団長ブルトと、数名の村人だった。
その顔には迷いと恐怖が混じりながらも、従わざるを得ない諦めがあった。
「代官様、こんなこと……」
「黙れ、ブルト。お前たちの家族の安全は、私の慈悲一つで決まるのだ」
月明かりの下、農家の小さな家が取り囲まれる。
俺は寝床から目を覚まし、外のざわめきに気付いた。
「……父さん? 母さん?」
父トットは鍬を手に、母クレアは怯えながらも俺を抱き寄せた。
「カイル、下がっていろ。絶対に出てくるな」
扉が破られ、アルレスが姿を現す。
「トット、クレア。選べ。子を渡すか、それとも……」
父は一歩前へ出た。
「代官様、あんたに屈するくらいなら……俺は農民でいい!」
その瞬間、剣が閃いた。
ブルトが絶望に顔を歪めながら、命令に従って父の胸を貫いたのだ。
「と、父さんっ!!!」
血が床を赤く染める。
母クレアが悲鳴をあげ、俺を抱きしめながら盾となった。
「この子だけは……守る……!」
アルレスの冷酷な眼差しが彼女を射抜く。
「愚かだな。王国のための子を、家族の情ごときで拒むとは」
刃が振り下ろされ、母の体が崩れ落ちた。
俺の目の前で、父と母の温もりが消えていく。
「……っあ、あああああああああ!!!」
喉が裂けるほどの叫びが夜空に響いた。
涙で視界が滲む中、アルレスがゆっくりと俺に歩み寄ってくる。
「さあ、来るのだ。お前は王国に仕える器……私が導いてやろう」
しかし俺の胸の奥で、怒りと絶望が燃え盛っていた。
震える手で懐に隠していた魔石を握りしめる。
父と母を奪ったこの力を……。
今、使うときだ。
(……父さん、母さん……俺は、守るためにゴーレムを作る!)
夜の闇が震え、俺の叫びとともに新たなゴーレムが生まれようとしていた。




