第13話 有益なる力と怪しい視線
夜の詰所。
団長ブルトは、薄暗い蝋燭の光の下で羊皮紙に筆を走らせていた。
【報告:六歳の少年カイル。】
【特殊な魔法を持つ。】
【石を組み上げ、魔石を核に据えることで、自律的に動く人形を生成。】
【既に丸太の運搬や巨石の移動に成功。】
【その力は人手不足の開拓において極めて有益。】
【今後は複数の人形を同時に操る可能性あり。】
ブルトの筆は迷いなく進んでいく。
彼の瞳には冷ややかな光が宿っていた。
「……開拓を助ける子供、などと報告しても興味は持たれん。だが“兵器にもなり得る魔法”と書けば、必ず反応する」
報告書の最後に一文を添える。
【この少年の価値は計り知れず。適切に導けば、王国にとって大きな利益となる】
封をして、貴族家の紋章が刻まれた封蝋を押す。
その赤い印を見つめ、ブルトは小さく笑った。
「……あのお方ならば、きっと欲しがるだろう」
数日後。
ルルーレン王都の一室。
分厚いカーテンに閉ざされた部屋で、一人の貴族が封書を手にしていた。
名は語られぬが、開拓団の資金を握る後援者。
報告書を読み進めるうちに、その口元に薄い笑みが浮かぶ。
「六歳の子供が……石の兵を操る、か。
まるで古代の“守護兵”を思わせるではないか」
椅子に背を預け、指で封書を軽く叩く。
「便利な道具は……所有するに限る。
この少年、カイルと言ったな。……手に入れる価値がある」
その呟きは、誰にも聞かれることなく闇に溶けていった。
その頃の俺は、そんな思惑など知らずに、今日も小さなゴーレムを前に魔力の調整を繰り返していた。
失敗を重ねながら、次こそ成功させる。
ただ純粋に、夢中で研究を続けていたのだった。




