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ゴーレムはロボットです。  作者: 山田 ソラ


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第138話 裁きの風、族長の選択とキキの答え

 黒風が消え、山を包んでいた重苦しい気配が完全に晴れた頃。

 

 エルフの里には、久しくなかった“穏やかな風”が流れていた。


 里の中央。

 古木の広場に、族長と長老、戦士長、そしてキキが並ぶ。

 カイルたちは少し離れた場所で見守っていた。


 族長は、深く息を吸い、ゆっくりと頭を下げた。


「……キキ」


 その声は、かつての命令口調ではなかった。


「我々は、間違っていた」


 エルフたちがざわめく。


「風精脈が弱まった時、原因を探すより……誰かを差し出す方が、早いと思ってしまった」

 

 族長は、拳を握りしめる。


「それが、里を守る“責任”だと、勘違いした」


 キキは、静かに族長を見つめた。

 怒りも、悲しみもすでに嵐のようには残っていない。


「……族長」


 キキは、一歩前に出る。


「キキは、あの命令……すごく、怖かった」

 

 その一言に、広場が静まり返る。


「でもね」


 キキは、胸に手を当てる。


「それ以上に、悲しかったんだ。 里が、考えるのをやめちゃったことが」


 族長の肩が、わずかに震えた。


「白竜は、敵じゃなかった。風精脈喰らいも……誰かが生んだ“歪み”だった」


 キキは続ける。


「キキは、もう……誰かを生け贄にする里には、戻れない」


 ざわめきが広がる。

 だが、逃げる風ではなかった。


 族長は、ゆっくりと膝をついた。


「……罰を受けよう」


 その姿に、戦士長が目を見開く。


「族長!」


「違う」  


 族長は首を振る。


「これは、里のためだ」


「我は、族長の座を退く」


 広場が、どよめく。


「風精脈を知らずに命令を下した責任。  そして、キキを道具のように扱った責任」


 族長は、キキをまっすぐ見た。


「許しは、求めない」


 沈黙。

 キキは、しばらく考えやがて、穏やかに言った。


「……キキは、族長を憎んでないよ」

 

 族長の目が揺れる。


「でも、キキは……ここに縛られる生き方は、もうできない」


「キキは、外で学ぶ。研究して、作って、守って……」


 キキは、後ろにいるカイルたちをちらりと見る。


「それが、キキの風だから」


族長は、深く頭を下げた。

 今度は、命令ではなく――

 祈りとして。


その後。

 里は、久しぶりに“平和な時間”を取り戻した。


 リーナは、木の家の階段を駆け上がり。


「たかーい!」


 大はしゃぎ。


 ヒカルは、エルフの子供たちと弓の話で盛り上がり。


「風の乗せ方が大事なんだ」


 少し大人びた口調で語っていた。

 母は、里の女性たちと薬草の話をし、父の骸骨ゴーレムは木陰で微動だにせず胸に小さく文字を灯す。


『平和、良』


 カイルは、キキと並んで里を歩く。


「……後悔、してない?」


 キキは首を振った。


「うん。むしろ、やっと……自分で風を選べた気がする」


 森を抜ける風が、優しく二人の間を通り抜けた。

 それはもう、誰かを縛る風ではなかった。




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